調布墜落事故 それでも飛行場は存続すべし

ハリウッド映画のクライマックスシーンのような事故、不謹慎ながらも、想像したこともないが故、それが第一印象でした。想像できない事故が起きてしまった今、想定外を想定内にするためになにを考えるべきなのでしょうか。今日は調布の小型機墜落事故について考えていきたいと思います。

26日、東京都調布市の住宅街に小型飛行機が墜落し、8名が死傷した事故について、事故原因の解明につながる詳細な情報が明らかになってきました。この飛行場では遊覧飛行は禁止されているにも関わらず、慣熟飛行名目の遊覧飛行が常態化していたことも疑われ、今回の事故でも、使用届には機長の操縦技術の維持を目的とした慣熟飛行と届けられていながら、同乗者の存在から観光などを目的とした遊覧飛行を行っていた可能性が浮上ています。飛行計画書の飛行時間は、調布から伊豆大島までの往復2時間と記載されているのに対し、搭載燃料が5時間分と記載され、6名の定員に対し、5名が搭乗していたことからも機体の重さが事故原因とみられています。2004年にはエンジンを損傷していたことも明らかになりました。28日には、事故を調査する警視庁は事故機の整備や管理を行う企業含め3社に業務上過失致死容疑で家宅捜索を行い、整備マニュアルなどを押収しました。今後の捜査の進展が待たれます。

今回の事故では、民家が巻き込まれたこともあり、周辺住民と飛行場の関係が各方面で取り上げられています。騒音や危険性の問題から飛行回数の削減を求める動きや飛行場そのものを廃止する動きもあったようですが、今回の事故を受けて一層その動きは大きくなると予想されます。事故や騒音被害に悩む地域住民の方のお気持ちは理解できますが、筆者は飛行回数を減らす必要はないと考えますし、ましてや飛行場は存続させるべきだと考えています。今回の事故原因はまだ正確には解明されてはいませんが、報道されている内容から機長のルール違反と飛行場側の監視に不備があったことが原因でしょう。本当に慣熟飛行を行うのならば、航空関係者でない人間が同乗者にいることに疑問を感じずにはいられませんし、飛行計画の所要時間分の2倍以上の燃料を搭載していることにも不審な点を感じます。このような事故のリスクのある飛行ができたのは、飛行場により慣熟飛行名義の遊覧飛行が黙認されていた可能性が高いともいえるのではないでしょうか。 つまり、規則を厳格に用いていれば、事故は防げたのではないかということです。事故を防ぐ意味でも、正式な慣熟飛行であれば、全く問題ないでしょう。回数が増えれば、それだけ安全に飛行できるパイロットが増えるということにもつながります。

また、この飛行場は昭和16年に開設され、米軍の接収や返還を経て、現在では離島への定期便が運航されています。開設した年は真珠湾攻撃が行われた年です。この年に生まれた方は74歳ということになります。高齢化社会とはいえど、飛行場に反対されている方の多くは生まれた時にはすでに飛行場があり、移ってきた方もその時点で飛行場は存在していたということになるのではないでしょうか。先に存在していたものを後からきた人間の都合が悪いからという理由で廃止に追い込もうというのは無理があるのではないでしょうか。また、この空港は個人の娯楽のためにあるのではなく、大島などの離島に向けた定期便が就航しており、公共性も十分に認められます。

以上の通り、機長と飛行場の管理運営上の問題が事故の原因であり、飛行場の存在そのものには原因はありません。その歴史や公共性からも、これまで通りの飛行を続けるべきではないでしょうか。とはいっても住民の生活苦を放置しろという気もなれません。大前提として、今回の事故原因を撲滅すべく、「偽装」遊覧飛行を厳しく取り締まり、飛行計画についても怪しい点を放置しないような体制を作りが大切です。前の記事でも書いたように、関わる者全てのチームプレーが肝心です。飛行間隔や離着陸の時間、飛行ルートについて再考をすることも一つの手立てでしょう。国産初の旅客機MRJの開発が進められるなど、航空機に関して良いニュースがある一方、昨年から今年にかけて航空機の事故が多発し、空の旅へマイナスイメージが広まっています。どうしても事故は起きてしまいますが、この事故で空の楽しさ、飛行機の良さを人々が忘れないことを願ってやみません。

参考記事:29日付、28日付(東京14版) 各紙関連面