帰って来い、ぼくらの任天堂

64(ロクヨン)、ゲームキューブ、ゲームボーイにWii。任天堂は僕の青春でした。ロクヨンでは「エキサイトバイク」で盛り上がり、ゲームキューブでは「ゼルダの伝説 風のタクト」に没頭。ゲームといえば、いつだって任天堂のゲームでした。

岩田聡・任天堂前社長が亡くなって約3週間。日本が、世界が「天才プログラマー」の死を悼みました。岩田さんの天才ぶりを象徴するエピソードがあります。TVゲーム「MOTHER2 ギーグの逆襲」を開発している時のことです。当時、岩田さんは任天堂の関連会社に勤めていました。ゲームを手掛けていた糸井重里さんは、開発に行き詰り岩田さんに相談。するとこう返ってきたそうです。

「よければお手伝いしますが、つきましては2つの方法があります。いまあるものを活かしながら手直ししていく方法だと2年かかります。イチからつくり直していいのであれば、半年でやります」(出所:ほぼ日刊イトイ新聞)

データを持ち帰った岩田さんは、1カ月でマップ移動を完成。半年後には通しでゲームができるようになったそうです。

天才なき後の任天堂はどうなるのか。その行方を占う2015年4-6月期の決算が発表されました。営業利益は11億円と、5年ぶりに黒字を達成しました。業績を引っ張ったのは「マリオ」や「ピーチ姫」など、人気キャラクターを模したフィギュア「アミーボ」。「Wii U」「ニンテンドー3DS」などのゲーム機にかざすと、そのキャラクターをゲーム内に登場させることなどができます。アメリカでは爆発的ヒットとなり、北米での売上高は前年同期比で約25%もアップしました。

業績拡大の主軸を担った「アミーボ」。手掛けたのは岩田さんでした。「任天堂のキャラクターのフィギュアが店頭に陳列されることで、ゲームに触れてもらうきっかけにしたい」。キャラクターを積極活用し、収益拡大を目指す戦略の第1弾として、岩田さんは「アミーボ」を打ち出したのです。

今回の好業績の立役者だった岩田さんはもういません。天才なき今、復調をキープすることはできるのか。独創性豊かな、面白いゲームでみんなを楽しませる。それが任天堂の骨頂です。帰って来い、ぼくらの任天堂。

 

参考記事:

30日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)経済面「アミーボが好調 任天堂営業黒字」

同日付 読売新聞朝刊(同版)経済面「任天堂 5年ぶり営業黒字」

同日付 日本経済新聞朝刊(同版)企業総合面「任天堂、ゲーム周辺が実る」