僻地を逆手に オンライン診療の可能性

 

新型コロナウイルス関連のニュースに隠れてあまり注目されていないのですが、最近、筆者には気になる話題があります。オンライン診療についてです。菅首相が規制改革のひとつとして、オンライン診療の恒久化を目指していると報じられました。来年6月に制度の骨格が固まる模様です。

この動きを整理するため、今年の4月ごろを振り返りましょう。オンライン診療に注目が集まったのは、新型コロナの感染者が増加しはじめたこの時期でした。院内感染を防ぐため、厚生労働省が全面解禁。これまで病院に行って診察を受けなければならなかったのを、自宅でも受診できるようになりました。病院側はもちろんのこと患者側も感染リスクを減らすことができるので、みなさんもニュースをみて、ホッとしたのではないのでしょうか。

筆者は幸いなことに今年一年大きな病気にかかることがなかったので利用することは無かったのですが、SNSをみていると「LINEで診察してもらったんだけどスムーズに終わって便利だった」といったコメントをいくつか確認しました。この一年で医療現場は大きく変わったのだなと実感します。

それと同時にもうひとつ感じたのが離島の強さです。冒頭でもお伝えしたように、オンライン診療が脚光を浴びるようになったのは今年になってからだと思います。しかし、離島ではそれ以前から遠隔医療という名前で注目されていました。日経の記事でもオンライン診療のことを「もともとは離島や山間地などへき地の医師不足を補うため、1997年の厚生省(現・厚労省)健康政策局長通知以来、20年以上の歴史がある」と紹介してあります。

今年に入って、離島ではオンライン診療の実用化に向けてさらなる取り組みが進んでいます。例えば長崎県の嵯峨島(さがのしま)では、市と長崎大、ANAホールディングス、NTTドコモ九州支社が協力したプロジェクトが進行しています。オンライン診療の後、島から約5キロ離れた港から、ドローンにのせて薬が届けられるという実証事業は、近未来的で驚きます。

幼い頃、対馬出身の筆者にとって離島は「僻地」であり、(時代に)遅れている存在でした。しかし成長していくにつれ、それは間違いだと気付きます。今回のように僻地であることを生かした取り組みを知ると誇りたくなります。これからもっと拡大するだろう、オンライン診療。離島でどういった取り組みが実現するのか楽しみです。

 

参考記事:

12月22日日本経済新聞デジタル版「規制改革で目立つ越年 首相、遠隔医療の結論は半年後

参考資料:

11月21日朝日新聞アピタル「遠隔診断、薬はドローンで 106人の島が未来の世界に