内閣府調査で明らかになったテレワークの実態

 「2020年度 新語・流行語大賞」にノミネートされた「テレワーク」。昨年までは聞き慣れなかったが、コロナ禍により瞬く間に普及し、日常的な言葉となった。しかし、テレワークそのものが国民的に定着したのか、と言えばそうではない。むしろ、一部の層に限られている、というのが現状であった。

 その実態を明らかにしたのが、今月24日に内閣府より発表された「第2 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」。この調査では、テレワーク実施率と年収に「正の相関関係」があることが証明された。 

.「【働き方】テレワーク実施率(本人の年収別)(「第2 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」)

 

 表の年収別のテレワーク実施率を見てもらいたい。所得が上がるにつれ、実施率も高くなっているのがお分かりいただけるだろう。もちろん、年収が低くてもテレワークをしている人はいる。しかし、圧倒的にマイノリティである。その背景としては、低所得者の職場環境がテレワーク向きではないこと、企業自体に導入するための金銭的余裕がないことなどが考えられる。一方で、年収が高い層はテレワーク実施が「当たり前」に近い状況になりつつあることも明らかとなった。

 また、地域によっても大きな差がある。例えば、12月現在、東京都23区が実施率42.8%なのに対して、地方圏では14.0%と顕著な差がある。感染状況の違いがあるとはいえ、あまりにも大きな差だと言える。

 昨今、「テレワークにより働き方が変わる、変わった」と盛んに論じられている。しかし、実際に働き方を変えられたのは一部の人々、より具体的に述べると都会の高年収の就業者に限定されていた。つまり、多くの働き手はテレワークとは無縁の生活を送っているのが現状なのである。

 テレワークを新たな格差の原因にしてはならない。そのためにも、政府は中小企業に対するテレワーク補助や正規雇用、非正規雇用の格差是正を促す政策を推進していく必要がある。

 

参考記事:

 

日本経済新聞・読売新聞・朝日新聞  新型コロナウイルス関連記事

参考資料:

内閣府「第2 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」

https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/result2_covid.pdf