昨年10月の台風19号上陸から、12日で1年となりました。阿武隈川水系の氾濫などで大きな被害を受けた宮城県・丸森町で追悼式があり、各紙で取り上げられていました。
丸森町には並々ならぬ思いがあります。昨年12月にボランティアとして現地入りしたことがあるからです。その後、3月11日に東日本大震災を追悼するために女川を訪れる前にも、友人を案内したいと思い、訪れました。いつも温かく迎えてくれる丸森町の人たちが大好きで、今すぐにでも足を運びたいくらいです。
■ 災害に強いまちづくりのヒントを宮城県丸森町で見た
■ 水害ボランティアとコロナで、ジレンマ。
〈山間部被災者 見えない〉
今現在、丸森町はどうなっているのか。ボランティアの際にお世話になった、丸森町役場の職員八島大祐(やしま・だいすけ)さん(44)に電話で話を聞いてみました。
前回訪れたときには、台風の被害が数か月経ってもそのままになっているのが印象に残っています。車を走らせると、土砂に埋まった車や、家の一階に土砂や木が流れ込んだ家が散見されたからです。まず、今の状況を聞きました。
「少しずつ工事が進み、片づけも済んできました。だいぶ雰囲気が変わったかなと思います」。状況がよくなっていると聞き、嬉しかったのですが、別の問題が浮き彫りになりました。町が元通りになっている一方で、山間部に住んでいる人の様子がわかりにくくなっているというのです。
以前から山間部で生活をしていた人たちは、もともと地域に根ざしてきた人は少ない、と八島さんは言います。
昨年ボランティアをしたのは、中心部から少し離れ、山に隣接した家でした。床下の掃除をしたのですが、その家に住む高齢の男性は、片付けを手伝ってほしい、と自ら要請したのではなく、町の職員が偶然紹介してくれたと言っていました。頼ることをしてこなかった人がいることを認識した出来事でした。
行政は在宅被災者の数こそ把握しているようですが、ケアが行き届いていないのが現状です。たとえ床上浸水しても放置されているケースもあるとか。修繕するかは、本人次第なのですが、そのままでは健康被害につながりかねません。災害関連死になる危険さえあると思いました。
〈人口流出がとまらない〉
町の雰囲気が変わってきたと言っていた八島さん。もう一つ理由がありました。それは、公費で半壊以上の建物の取り壊しが始まり、少しずつ家屋が壊されているからです。
その多くが同じ場所に再建するわけではありません。人によって選択は異なりますが、町外に住む息子や娘のところに引っ越す人が多いそうです。人が流出することで、町の経済への打撃が心配されます。台風後に丸森町のことを知った私ですら、住みたいなと思う要素が詰まった場所です。長年暮らしたところを離れるには、さまざまな葛藤があると想像できます。とても残念なことだと思いました。
今回聞いた話は、ほんの一部のことでしょう。「話しきれない」と八島さん。
最近では、災害が頻発しているためか1年前の話であっても、全国紙での扱いが少ないと感じます。同じ台風被害にあった長野県のことは、14日のあらたにすの投稿「台風19号1年 自身のボランティア活動から」でどんな状況か詳しく知ることができました。
では、なぜ丸森を取り上げるのか。それは、ほかの台風や豪雨災害に見舞われた地域でも、同じようなことが起きていると考えるからです。私の住んでいる町でも起きる可能性は十分にあります。自然災害は天災で仕方がない。そう考える一方で、根本には持続可能な社会とは対極のところで、人間が生活してきたという過去そして現在が透けて見えます。災害に目を向けることは、私たちが長く快適に生活するために大切なことだと思うのです。
最後に、丸森町の最近の取り組みを紹介したいと思います。今月7日の朝日新聞朝刊に、「丸森の被災経験、伝授します 台風19号の学び、他自治体に向けて発信」という記事がありました。町の公式サイトに、災害に対応する部署の一覧を載せ、これまでに得たノウハウを伝授しようという試みです。九州豪雨を受けて、7月下旬から始めたそうで、被災した熊本や大分などにメールを送り、支援を申し出たそうです。失敗談も合わせて伝えているとか。きめ細やかな取り組みだと思いました。
丸森町のことをこれからも追っていきます。コロナが落ち着いて、訪れることができたときには記事にしたいと思います。
参考記事:
13日付朝日新聞朝刊39面(社会)「正子はどこへ、刻めぬ名前 台風19号、妹が行方不明『骨だけでも』」
7日付朝日新聞朝刊19面(宮城全県)「丸森の被災経験、伝授します 台風19号の学び、他自治体に向けて発信」
河北新報オンラインニュース 「台風19号で土砂崩れ 宮城・丸森の行方不明者親族、独自に捜査続ける」(2020/10/16 21:40最終閲覧)
河北新報オンラインニュース「丸森・筆甫地区の主要道寸断、今も通行止め 地区外再建を選ぶ住民も」(2020/10/16 21:40最終閲覧)
参考資料:
丸森町公式ホームページ「被災された自治体の職員の皆様へ」