後期もオンライン、感じる心の距離

大学の後期授業が始まり、2週間が経ちました。オンラインを併用しながら、対面授業にも踏み切った大学は少なくありません。筆者は、後期も全てがオンライン授業になったため未だキャンパスに入ることはできませんが、前期と比べると大きな変化が。前期はオンデマンドや資料配布形式だったものも、後期になるとリアルタイム型に移行しました。「やっと機材に慣れてきたから、挑戦してみる」という教授が増えたのが理由です。そうなるとトラブルも付き物。教授と学生、学生と学生の意思疎通をスマホ、パソコン、そして周りの環境が邪魔します。筆者と友人が受講したオンライン授業での一コマを紹介します。

 

<筆者の体験:教授と学生>

「A君、僕の声は聞こえていますか。聞こえていたら返事をして下さい」

リアルタイム型のオンライン授業冒頭、教授が学生に呼びかけました。ウェブ会議システム「Webex」上に表示された学生を教授がランダムに選び、音声やビデオの不具合がないか確認しようとしたのです。しかしA君から反応はありません。教授は何度も声を掛けます。するとシステム上のチャットにA君からメッセージが。「現在、周りに人がいるので声を出すことができません」。

 

<友人の体験:学生と学生>

Webexは、数十人いる学生を少人数グループに分ける機能があります。友人が受講しているリアルタイム型授業の中心は、ランダムに分けられたグループ内でのディスカッション。友人が割り振られたグループは4人。その友人が話し合おうと声を掛けても、誰からの返答もありません。ビデオ、マイクをオフにしているため、画面の奥に学生がいるかも分からない。不安になって教授に相談し、別のグループに混ぜてもらったそうです。

 

「どこで授業を受けるか、どれほど積極的に参加するか」。学生自身が決めることができる今、画面越しでの意思疎通は非常に難しくなっています。不特定多数に自分の生活音、生活空間が聞かれる、もしくは見られることへの抵抗感からほとんどの学生がマイクとビデオの両方をオフにします。物理的な距離ばかりでなく、心の距離も感じるように。前期以上の不便さを感じながら、今日も筆者はパソコンに向かいます。

 

参考記事:

2日付朝日新聞夕刊(東京3版)9面(社会)「大学 対面授業手探り」