迷惑な聖地巡礼、住民のことも考えて!

「もう解体工事が終了しまして・・・」

その後は覚えていません。警備員さんの言葉は衝撃的でした。昨年7月18日、京都アニメーション第一スタジオが放火され、多くの関係者が亡くなりました。建物は黒いススと焼け跡で、元の姿は想像できないほどでした。しかし、今は綺麗な青空がすっきり見えるほど、何もない状態です。跡地利用をめぐっては、不特定多数の人が訪れる公園や慰霊碑などを作らないよう、地元町内会は京アニに要望したそうです。

2019年9月27日/京都アニメーション第一スタジオ/筆者撮影

2020年7月16日/第一スタジオ跡地/筆者撮影

周辺で変わっていないところ。弔問などで訪れる人や報道各社に向けた注意書きが書かれた看板が、同じ場所に置いてありました。第一スタジオ周辺は一軒家が並ぶ住宅地。住民かどうかは一目で分かると思います。

以前、特集記事で訪れた時は、報道関係者が5人ほどいました。某放送局の取材クルーは狭い路地を何度も往復し、取材相手を探していました。また他の関係者はカメラを片手に、誰か来ないかと待ち伏せているようでした。一般の人も大勢で話しながら見に来、ある人は自転車や車で来るなど、まるで観光地のようでした。いまだにその光景が忘れられません。

見知らぬ人が毎日家の近くに来るという恐怖、常に目線を気にしなければいけないという生活は、徐々にストレスが溜まると思います。いつになったら注意書きの看板が要らなくなるのでしょうか。

「聖地巡礼」と聞くと、ポジティブなイメージが浮かびます。成功した例だと、2013年度に放送されたNHK朝ドラ「あまちゃん」が挙げられます。舞台は岩手県久慈市。市のホームページを調べてみると、観光スポットとして「あまちゃんロケ地」というマップが載っています。いまだに根強い人気で、多くの観光客が訪れているようです。

今回のように、聖地化した第一スタジオ跡地は一軒家で囲まれています。忘れてはいけない事件が起きた場でもあり、ファンにとっては思い入れが強いかと思います。しかし、周辺の住民を考慮して、「行かない」のが賢明ではないでしょうか。

18日は事件が発生してちょうど1年。休日ということもあり、密集した土地に多くの人が押し寄せ、トラブルが起きないか。とても心配です。

参考記事:

16日付 読売新聞朝刊(大阪13版)31面「娘との日常 奪われた」