日本の大学 問われる危機管理能力

コロナウイルス感染症の拡大は重大な局面を迎えています。全世界での感染者数は40万人、国内でも1200人を超えました。爆発的感染が起きるか起きないかの瀬戸際で、拡大防止の鍵を握っているのは大学の判断です。

大学は集団感染の温床です。厚生省の専門家会議が提唱した3条件、すなわち密閉空間、人の密集、密接した会話、全てを満たします。大講義室に数百人が集って議論する授業は非常に危険です。もし学内で集団感染が起き、免疫力の高い無症状の学生が学外でウイルスを拡散させてしまったら、爆発的な感染拡大は免れません。大学附設の医学部病院で感染者が現れた場合、医療崩壊も起き得ます。

この渦中にあって、海外の大学は早急な対策を取っています。以前の記事で紹介した通り、中国では「学習通」アプリを活用した授業が先月から実施されています。北米の大学も「Zoom」アプリを利用したオンライン授業に切り替えました。感染者が比較的少ない東南アジア地域でも続々と授業が中止になり、遠隔配信が始まっているという話を聞きます。

一方、日本の大学は紙の書類や印鑑を多用しICTの導入が進んでいません。非効率的で融通の効かない“お役所仕事”がまかり通っている世界とも言われます。十分な対策を取れているのか現状を調査しました。

Zoomアプリ(イメージ:公式サイトより引用)

 

迅速な判断が目立つのは早稲田大学です。国内の感染者が僅か200人程度だった2月27日に、卒業式と入学式の中止を決定しました。3月6日の時点で、新学期を4月下旬以降に繰り下げることを発表し、昨日、5月11日に新学期を開始することを発表しました。多目的運動場や体育館などの学内施設は2月23日から使用禁止にしたうえで、部活動、サークル活動も同日から自粛させています。早大生の中には、学費を一部返還して欲しいという声や、部活、サークル、バイト全てが無くなって辛いという声もありますが、他大に先駆けて早急な処置を取ったことには敬服します。

神奈川大学は3月13日に、新学期を5月7日に開始することを発表しました。気の緩みや自粛疲れが世間に広まり始めた当時は、授業を1ヶ月も遅らせることに懐疑的な意見もありましたが、2週間経過した今振り返ると、感染拡大を予期したうえでの英断だったと思います。

発表が極めて遅かった大学もあります。青山学院大学法政大学は、それぞれ3月19日、23日になってから授業開始の繰り下げを発表しました。3月上中旬の間、学生たちは気持ちが落ち着かず、予定も立てることも出来ず困惑したでしょう。

私大の多くは4月下旬への延期を決定しましたが、一部は新学期開始の日程が定まっていません。津田塾大学明治学院大学は4月下旬開始にするか5月上中旬以降にするか検討中です。今後の感染拡大の状況を見て判断を下す模様です。

オンライン授業の実施体制を既に整えた大学もあります。国際教養大学は、新学期開始を4月20日に遅らせたうえで、7月までの春学期の全授業をSkypeやYoutubeを通じて提供すると3月19日に発表しました。公式ウェブサイトによると

本学の教員と自宅の学生との間でリアルタイムに授業を展開する「双方向型」、皆さんが、都合の良い時間に、動画として配信された授業を見てメール等で質問をしたり、課題を提出したりする「オンデマンド型」の2つのタイプの授業展開を基本とします。また、その2種類を組み合わせた「ハイブリッド型」も想定しています。

とのこと。かなり具体的な準備が進んでいるようです。

立命館大学聖路加国際大学は、予定通りの日程で新学期を始めるものの、5月初旬まではクラウド型の教育支援システム「manaba」を利用して、在宅受講形式の授業を進めると発表しました。国内で3番目に学生数が多く、様々な学部や授業形式がある巨大総合大学の立命館が全授業のオンライン実施を決断したことには驚きです。

manaba(イメージ:公式サイトより引用)

国立大学は慎重な判断が目立ちます。北海道大学名古屋大学は僅か1週間のみの延期という判断を下しました。東京工業大学は主に「Zoom」を活用した遠隔配信授業を実施し、学生に自宅受講するよう伝えましたが、東京大学京都大学はオンライン授業の準備が整っていません。そもそも両大学は決断が遅く、それぞれ19日、26日になってから一般教養科目へのオンライン授業を導入すると発表しました。授業配信に利用するシステムや導入開始日は未だ決まっておらず、新入生は不安かもしれません。

我が大阪大学は抜本的な対策を取れていません。大講義室での授業も厭わず、予定通り4月上旬から授業を始める決断を下しました。今まで、緊急時の事業継続計画(BCP)や遠隔配信授業の実施を真剣に検討していなかったのでしょうか。危機管理能力の欠如を嘆く声が学生から上がっています。また、早大が2月下旬から学生の課外活動や学内施設の利用を禁じていた一方、阪大は3月18日になってから、21日〜31日までの課外活動を禁止する旨発表しました。告知の遅さと禁止期間の短さに在学生は驚かされました。独自にYoutubeでレクチャーの配信を始めた教授はいるものの、全体的な対応が改善されることを期待したいものです。

一橋大学もほぼ予定通り新学期の講義を始めます。講義室の換気を改善し、着席する学生間の距離を広げ、一部の大人数の講義を映像配信にする以外は、全く普段通りの授業が4月1週目から始まります。

様々な大学を調べてみましたが、対応には大きな差があることが窺えました。立地や規模によって感染リスクには差があるので、全ての大学が足並みを揃えて同じ対応を取る必要はありません。しかし、オンライン授業の実施を真剣に検討し、迅速に判断を下すことについては、徹底することを強く望みます。

前例なき緊急事態。各大学の危機管理能力が問われています。

 

 

参考記事:

朝日新聞、日本経済新聞、読売新聞 新型コロナウイルス感染症 関連記事

 

参考資料:

各大学の公式ウェブサイト

株式会社朝日ネット「manaba」 https://manaba.jp

Zoom「Zoom ミーティング」 https://zoom.us/jp-jp/meetings.html