続編・中国の大学生に聞く 新型肺炎の社会的影響

新型肺炎(COVID-19)の流行が止まりません。日本では北海道から沖縄まで12都道府県で計87人の感染者が見つかっています。都市圏での通勤列車は感染拡大のリスクが高く、さらに増加する恐れがあります。中国では累計の感染者数が7.5万人を超えました。増加の勢いは弱まっているものの、予断を許さない状況が続いています。

患者の分布(21日11時現在;百度百科より引用)

 

そこで、1月30日の記事に引き続き、

・1月上旬から湖北省十堰市に滞在しているAさん

・浙江省在住、同省杭州市の大学に通うBさん

・甘粛省臨夏回族自治区に住む、院試浪人生のCさん

3人の知人に改めて連絡を取り、各地の現状と社会への影響について聞きました。

 

まずは、街の状況について。

湖北省に滞在するAさん「市を通る主要道は依然封鎖されたままだ。1家族につき、3日に1回1人限り外出が許されているものの、その際通行証を必ず携帯しなければならない」と言っていました。なかなか不便な暮らしのようです。物流が滞り、食料品店がほとんど閉店しているため「家の料理に飽きてきた。外食して美味しいご飯を食べたい」と不満も漏らしていました。

Bさんは中国国内で感染者が4番目に多い浙江省に住んでいますが、状況は改善しています。省内で一昨日新たに確認された感染者はわずか2人で、退院率も43%に上ります。「映画館やデパートこそ再開していないが、工場は再稼働し始めた。(累計感染者数504人を記録している)温州市の道路封鎖も近日中に解除される見込みだ」とのこと。ただ、規制を緩めるだけでなく、感染の再拡大を防ぐ取り組みも同時に実施されています。市民が直近2週間の行動と体温をスマホアプリに記録すると、携帯に通行証のQRコードが表示されます。緑色の場合はどこにでも自由に移動できるものの、黄色は7日間、赤色は14日間の隔離観察処分を強いられるそうです。

浙江省の健康QRコード

感染者が多い地域では、個人の行動の自由やプライバシーの侵害を厭わない徹底した対策が取られていることが窺えました。日本の場合は法的な観点と政府の決断力の点で実施は不可能でしょう。なお、Cさんは感染者が少ない地域に住んでいるので移動制限はないものの、街の人通りはかなり少ないとのことでした。

 

次に、大学の状況について聞きました。

Aさんが通う大連理工大学では、新学期の授業が来週からネット配信で提供されるそうです。「学习通(学習通)」というアプリを用いて、自宅で授業に参加します。試験や小テストが実施されることはないものの、レポート課題を提出することもできます。大学が所在する遼寧省は感染者が比較的少ない地域となっていますが「中国の大学には地元の省からだけでなく、全国の様々な地域から学生が集まっている。4人1部屋の寮生活を行うので感染拡大のリスクが高い。大学に行きたい気持ちはあるが、しばらくは遠隔授業を続けた方が安全だと思う」と言っていました。

学习通アプリ

Cさんが通っていた北京外国語大学も授業をネット配信。労働節の連休前、5月1日まで続く予定だそうです。一方、Bさんが通う浙江工商大学は授業の配信はせず、新学期開始を3月2日に再延期する措置を取ったそう。全ての大学という訳ではないものの、多くがオンライン授業配信の準備を早急に整えたことに驚かされました。

 

企業や工場の活動について。

個人の行動と同じように、会社の活動も徹底的に管理されています。Aさん「湖北省ではマスクと防護服の工場以外、ほぼ全て営業停止している。再開する場合は、マスクの備蓄証明と社内の感染防止策を記した申請書を州政府に提出し、認可されなければならない。」他に「広東省や浙江省を含め他の地域では営業を漸次再開するようになっている」という声もありました。

 

マスクの需給状況は。

Aさん「他の地方は十分あると思うが、湖北省では足りていない。医者、看護師だけでなく、警察官も皆マスクを着用している。武漢市中心部に住む親戚は、家の中でもマスク着用を義務付けられている。」Cさん「マスク工場が営業を再開し、海外からの寄贈もたくさん届いたがまだ不足している。日本同様、マスクを買い占めてネットで高額転売する人もいる。」国を問わず、品薄な商品の高額転売問題は起こりうると実感しました。

 

社会への影響に関して意見を聞くと。

Aさん「2、3月のイベントやスポーツ大会は中国全土でほぼ全て中止になった。4月に北京で開催予定だった嵐のコンサートも中止。5月の大連国際マラソンや万里の長城マラソンの開催可否は決まっていないが、新型肺炎の問題が4月頃までに収束していることを願いたい。」Bさん「直近1週間で中国の感染者は大分減った。むしろ日本の方が気がかりだ。クルーズ船の乗客400人超が下船後そのまま家に帰ると聞いたが、私たち中国人はとても心配しています!」

東京五輪を控え、スポーツ選手の練習、調整を心配する声もありました。「五輪委員会や各競技の協会は選手の体調を徹底管理し、安全な練習環境を全力保障すると言っているが、本当に大丈夫なのか…。」

中国の各スポーツ機関の声明

 

3人との連絡を通して、様々な社会的影響が生じていることが分かりました。湖北省政府の初動に問題があったことは否めませんが、現在は道路封鎖や外出禁止令など、感染拡大の防止策が徹底されていることが分かりました。

日本政府はどうでしょうか。感染が蔓延する前に、同様の対策を取れるでしょうか。鉄道や高速道路を止め、国民の不要不急の外出を禁止。38℃以上の熱を持つ人を強制隔離。絶対に不可能でしょう。緩めに警告を発することが限界です。

大学は新学期の開始時期を遅らせたり、全授業の遠隔配信を迅速に実現できるでしょうか。企業は緊急時の資金繰りやリモートワークの用意ができているでしょうか。

柔軟な対応策が取れなければ、壊滅的な学内・社内パンデミックが待つのみです。

 

参考記事:

朝日新聞、日本経済新聞、読売新聞 新型肺炎流行 関連記事

 

参考資料:

百度百科「新型冠状病毒肺炎 疫情实时大数据报告」

https://voice.baidu.com/act/newpneumonia/newpneumonia