低投票率は「平和」の証し

待ちに待ったゴールデンウイークもあっという間に最終日、幸か不幸か、明日からまた日常生活が始まります。皆さんの連休はいかがでしたか。観光地はどこも大混雑、軍艦島や三池炭鉱などが世界遺産登録の勧告を受けたこともあり、どこかへ旅行に行かれた方も多いかもしれませんね。そんな連休に沸く日本から遠く離れたある国では大変興味深い動きがあるようです。連休の最後は是非あらたにすにお付き合いください。

7日に投開票される英国総選挙(下院定数650)では保守党と労働党の支持率が拮抗しています。両党とも支持率は33%と差がなく、2大政党のどちらも単独過半数を取れない「ハングパーラメント」(宙吊り議会)になることが予想され、他政党との関係が鍵を握ることでしょう。政策では財政と経済対策に焦点が集まる中、労働党を含めた複数の政党が投票年齢を現行の18歳以上から16歳以上に引き下げることを公約に掲げています。特にスコットランドでは昨年秋に行われた独立をめぐる住民投票で16歳にも投票権が与えられたこともあり、若年層の政治意識が急速に高まっているとみられ、総選挙で必ず投票すると答えた18歳から19歳の割合は65%とイングランドのおよそ2倍と関心が高く、20歳から24才でも高いことから、引き下げの実現は近いのではないでしょうか。

日本でも投票年齢の引き下げが議論されていたり、町村単位ではすでに住民投票で中学生が投票している事例が見られています。若年層の投票率が低下している中、確かに有権者を拡大することで若い世代の声がより反映されやすくなることは素晴らしいことです。ですが、筆者はこのような議論にはあまり賛同できません。そもそも日本の若い世代なぜ政治参加しないのかと考えた時、理由として考えられるのが、「平和だから」ではないでしょうか。消費増税や社会保障、人口減少など現在から将来に渡って問題になるであろう課題は山積みですが、今日の暮らしが明日激変するというわけではありません。同じ一日でしょう。しかし今回のスコットランドの事例は、自分の住んでいる地域が違う国になるかもしれないなどという一大事です。極端な例えですが、日本から大阪や愛知が独立すると宣言するようなものでしょう。そのような一大事であれば、昨日まで無関心だった若者も自然と意識するようになるのではないでしょうか。

そう考えてみると、問題だらけでも暮らしが大きく変わるような事態にまだ直面せず、投票に行かなくともなんとかなっているということはある意味で「平和」なのかもしれません。また、スコットランドのように大きな出来事があって初めて投票率の引き下げが議論される状況は、選挙が流行りのような状況で若年層の高い投票率もいずれ日本のように低下していくでしょう。安易に選挙権拡大は本質的な解決には繋がらず、若い世代が投票に行かない状況は改善されないため、かえってますます投票率が下がるかもしれません。

間違っても無投票を容認するつもりはありません。自分の声は投票することで為政者に届きます。ですが、政治に関わらなくとも、ある程度安定した生活が送れるということもある意味評価できるのではないでしょうか。筆者の19歳の頃の5月6日と今日2015年5月6日を振り返ると、ほとんど同じでした。政治に参加しようがしまいが変わらない日常の暮らし、連休で非日常を体感した分、日常の安定に向き合っても良いかもしれませんね。

参考記事:6日付朝日新聞朝刊(東京14版)7面(国際面) 「16歳投票 実現に関心」