アレルギーは治るのか?

 「制御性T細胞(Tレグ)」をご存知でしょうか。難しそうな話と思われるでしょうが、この細胞の役割を解明するなかで、アレルギーなど様々な病気の治療に役立つ可能性があることが分かり、急速に研究が進んでいます。

この細胞は、私たちの体を外敵から守る免疫を支えるT細胞のうちの一つだそうです。仲間には攻撃型のキラー細胞やそれを手伝うヘルパー細胞がいて、私たちの体内で活躍していますが、ときには暴走してしまう危険があります。自分の体の正常な組織を壊してしまうわけです。そうした事態を防ぎ、キラー細胞などの働きを抑制するのがTレグです。もちろん、攻撃を抑えすぎれば、がんなどの病気を許してしまいます。シーソーのようなバランス関係が大切なわけです。

注目したのは、このTレグ細胞の機能が不十分であることがアレルギーの原因であるという説があるからです。私にはホコリ、ダニといったハウスダストによるアレルギーがあり、時おり鼻水やくしゃみ、かゆみに悩まされることがあります。発症したら最後、仕事にも勉強にも身が入らなくなります。花粉症の人も同じような悩みがありますね。ただ、私の場合は、症状が軽いとはいえ、ハウスダストが原因のためアレルギーと無縁の時期はありません。春先だけ要注意というわけではないのです。

現在、Tレグ細胞を増やす目的で、スギ花粉の「舌下免疫療法」などが行われています。ただ、治療期間が長いなどの課題があり、さらにスギ花粉のアレルギーの原因物質の一部を含んだ米を一日一回食べるというような新たな治療法も考えられているようです。これもTレグ細胞を増やすことが目的ですが、アレルギーによるショック症状の原因となる部分を取り除いた物質を利用することでより安全かつ早い治療が期待されています。すでに研究が進んでいるそうですが、アレルギーの患者のひとりとしては全く実感がありません。

これはおそらくアレルギー治療の対象が患者数の多さや症状の酷さによって決まるため、スギ花粉の研究ばかりが進んでいるからだと思っています。社会のためにも、このような基準があるのは仕方ないですが、私のアレルギーを抜本的に治療できる日が一日も早く来て欲しいものです。

がんばれTレグ。

参考記事:5月7日付読売新聞夕刊(東京3版)9面「知の探検 制御性T細胞」