技術に抜かされたマラソンのルール

スポーツ×最先端技術。技術は選手の能力を最大限に生かす役割を担ってきました。そして、記録や審議の場面においても、人間の目では確認出来ないところまで分析し、より正確な情報を与えてくれる存在です。しかし、存在感が大きくなればなるほど、逆効果を生み出してしまう可能性もあります。「公平さ」「記録における正確さ」が求められるスポーツにおいて、「日々進歩する技術をどのように生かすか」を議論すべき時期が来ています。

「〇〇選手、話題の厚底シューズを履き記録更新」

マラソン界では、ナイキの厚底シューズ「ヴェイパーフライ」について、規制すべきかどうかの議論がなされてきました。高い反発力を持つカーボンファイバー製のプレートと、クッション性の高い超軽量素材が魅力のシューズです。それにより、「下り坂を走っているような走り心地」と言われるほどの快適さを実現しました。

しかし、一部の意見では「厚底のおかげ」という声も出ています。ニュースを見ても、そのような内容が注目されています。確かに技術のサポートによって、良い結果が生まれるといった関係性はあるかもしれません。しかし、本来であれば、選手の努力を賞賛すべきであるのに、どちらかと言うと装飾品に目が向いていると感じます。

それほど多大な影響を及ぼした厚底シューズ。世界陸連は合わせるかのように急遽ルールを制定しました。私はこの点に疑問を抱きました。なぜ装飾品に関する細かなルールがなかったのでしょうか。世界陸連のシューズに関する規則に、跳躍種目以外は具体的な基準がありませんでした。

技術がベースとなったルールなのか、ルールがベースとなった技術なのか。私は後者を支持します。なぜなら、いくら企業が高性能な用具を開発しても、使用禁止になっては意味がないからです。最初から基準があれば、その中での開発は有意なものになるでしょう。

しかし、いつまで経っても同じルールではいけません。時代に応じてアップデートする必要があると思います。色々と試行錯誤があるかもしれません。それでも、常にルールがベーストなり、その中でメーカーが開発することは、選手や企業にとってもメリットになると考えます。

参考記事:

2日付 朝日新聞朝刊 14版18面「ナイキ厚底 五輪へ」

同日付 読売新聞朝刊 13版11面「「厚底」五輪控え新規制」