5月、街のあちこちで母の日キャンペーンが始まる。駅中やデパートの各所でカーネーションの花束とともに「母の日」の文字が並ぶ。今年も母へのプレゼントを買いに、10か所ほどのショップを回った。スイーツ、花、雑貨と選択肢は豊富で、どこも母の日キャンペーンを実施していた。
そして6月。父の日のプレゼントを買おうと、同じ店をもう一度回ってみたところ、キャンペーンをしていたのは、わずか4か所だった。もちろん、筆者が立ち寄ったのはほんの一部に過ぎないが、この違いにはどういった背景があるのか気になった。
母の日といえばカーネーションということは、ほとんどの人がすぐに思い浮かべるだろう。では、父の日のモチーフは?
恥ずかしながら筆者も初めて知ったのだが、答えは「黄色いバラ」だ。知らなかったのは筆者だけかと周囲の友人に訪ねてみたところ、大半が知らなかった。
二つの記念日はどちらもアメリカ発祥で、その起源には家族への深い思いが込められている。母の日は、アンナ・ジャービスという女性が亡き母を追悼するために教会で白いカーネーションを配ったことが始まりとされ、1914年に正式な記念日となった。父の日はソノラ・スマート・ドッドが、男手ひとつで自分を育ててくれた父への感謝から1910年に提唱し、1972年に正式制定された。どちらも「親への感謝」という同じ動機から生まれた記念日だ。
なのに、なぜこれほど認知度に差があるのだろう。
街中で感じた温度差は、数字にも表れている。ある調査によれば、母の日の市場規模は4,700〜5,000億円に達する一方、父の日は2,000億円程度にとどまるという。また別の調査では、父の日ギフトの予算として2番目に多い回答は「お金をかけない」だったという。母の日の2位が「4,000〜5,000円」だったのとは対照的だ。
店が父の日キャンペーンに力を入れないのも、こういった事情からくるものかもしれない。市場が小さければ企業は動かず、企業が動かなければ人々の意識も高まらず、そして市場が小さいまま、という循環だ。
この落差からまず連想するのが、家庭における父親と母親の存在感の違いだ。育児や家事に直接関わる機会が多いのは、今も多くの家庭で女親だ。日常的なつながりが深い分、感謝の気持ちも自然と育まれやすいのだろうか。だからといって、父親への感謝が薄くていい理由にはならない。むしろ、日常のなかで目立ちにくいからこそ、こういう機会に言葉や贈り物で伝えることに意味があるのではないかとさえ思う。
特定の何かに対してではない「ありがとう」という言葉は、日ごろ案外言いにくく、特に親に対しては、照れくさくて言いそびれてしまうことも多い。でも母の日や父の日には「今日はそういう日だから」という口実が使えるのではないだろうか。記念日には、感謝を伝えるための後押しという効用もあるのだ。
プレゼントは必ずしも贈る必要はない。ただ、親は自分より先にいなくなるだろう。感謝を伝えられる機会は、思っているより少ないのかもしれない。
参考資料
朝日新聞Reライフ.net, 50代以上の贈り物事情「父より母に」 肩身が狭い父の日, 2018.6.10
HUG FLOWERS,【比較】母の日と父の日はいつ?違いと由来、感謝の伝え方のコツ