今、あなたの手元に本はありますか。紙の本を持っている人もいれば、電子書籍の人もいるかもしれません。どちらも間違いなく本ですが、利用する年代や目的によって、使いやすい媒体は変化するでしょう。
デジタル教科書は2030年を目途に正式な教科書として導入される方向です。こうした動きのなかで、読売新聞が実施した全国の小学校長を対象とした調査では、多くの学校が紙の教科書をメインに進めたいと考えていることが明らかになりました。理解が深まるという評価や、視力などの健康面を心配するものなど、紙の教科書を支持する理由は様々でした。
一方で、学びやすい媒体は子どもによって異なるとも考えられます。選択できるのであれば、子どもにあった教科書の形式を選ぶべきとの考え方もあるように思います。そこで、紙の本が今の子ども達にどのように受け入れられているのかを知りたいと思い、身近な施設を訪れました。
本に囲まれる
筆者が訪れたのは、「こども本の森 神戸」です。最初に目に入った光景は、壁一面を埋め尽くす本棚です。通路のような空間から始まる絵本の世界は、どこを見ても本が並び、天井まで思わず見上げてしまうほどです。
歩みを進めるごとに明るくなる空間には、懐かしい本や初めて見た本、絵本のみならず写真がたくさん載っているものから、少し難しい解説書まで、幅広い本が並んでいます。すれ違う子どもも大人も、みんながわくわくとした表情で本を手に取っていました。
「これ読んでー!」
「ほら、見てみて、ここにかくれんぼしてるよ」
「あそこ上がろ、いっぱい本あるよ」
(6月6日筆者撮影 こども本の森 神戸にて撮影)
この空間でスマートフォンを触っている人がとても少なかったのは印象的でした。子ども達のみならず、階段に座って本を読む大人の姿もあります。この施設の外にある東遊園地の公園で遊んできたばかり中学生ぐらいの少年もいました。こうした中で本を持っていない人は一人もいません。紙媒体の本がいまだに多くの人に愛されているのだと感じられました。
ここでは寄付された本が数多く並べられています。施設自体が建築家の安藤忠雄氏によって神戸市に寄贈されたものであり、多くの人が子どもたちと本を繋ぐ場所の大切さを理解していることが分かります。
(6月6日筆者撮影 こども本の森 神戸にて撮影)
一番奥には休憩室がありました。木のぬくもりがある館内とは対照的に、コンクリート造りです。梅雨の季節には雨が落ちる音が聞こえます。本を読むだけでなく、ふと目を閉じて深呼吸をしたくなる空間です。いくつかの絵本が椅子に置かれており、筆者も、気が付くと本を開いてゆったりと読んでいました。
教科書はデジタルにすることで分かりやすくなる情報もあります。しかし、今回訪れた施設では、人々が同じ空間で本を手に取り、親子で絵本を読みあったり、子どもが気になる本を見つけては嬉しそうに笑ったりしていました。紙の本には、人と人を繋ぎ、会話を生み出す力があるのではないでしょうか。
これからも、紙の本が無くなることなく、幼児やデジタル教科書に触れる小学生にも読み続けられることを願います。
〈参考文献〉
2026年5月26日付 読売新聞(大阪)1面「低学年教科書「紙」9割」、3面「学びに集中「紙」重視」
こども本の森 神戸 ホームページ, https://kodomohonnomori-kobe.jp/

