部活動がなくなる? 「地域展開」ってなに

教員の働き方改革に伴い、公立中学校の部活動を校外に移す動きが全国的にみられます。スポーツ庁は、主に休日の部活動での「地域展開」を推進してきました。また、今年度から平日の部活動に関しても進めようとしています。筆者の地元、京都市では、2028年度から現在の公立中学校の部活動を廃止し、地域クラブに移行する方向で検討会議を重ねている状況です。

教員は働きすぎ?

以前から、日本の教員の仕事時間の長さは問題視されていました。25年の経済協力開発機構(OECD)の調査では、中学校調査に参加した55カ国のうち、日本は平均55時間で最長でした。18年度の調査よりも1割減少したものの、依然として長時間の勤務を行なっていることが浮き彫りになりました。

また、日本教職員組合の働き方改革に関する調査で、公立学校の教職員の3人に1人が「勤務時間を実際より短く申告した経験がある」と回答しました。この調査では、土日を含めた1週間の勤務時間は平均59時間44分で、1カ月に78時間56分の残業となる計算です。相変わらず「過労死ライン」に近いレベルで、こうした長時間労働の要因の1つとして挙げられるのが部活動です。

 

部活動の地域展開ってなに

教員は授業や生徒指導に加え、放課後や休日の練習、大会引率まで担う場合が少なくありません。また、専門外の競技を指導するケースもあり、技術指導や安全管理面でも教員の負担が重くなる構造でした。部活動そのものには教育的意義が評価されているものの、学校と教員に依存した仕組みとなっていることから、負担軽減や地域展開を求める声が高まっていました。

そのような背景から、積極的に地域展開に取り組んできた自治体があります。富山県朝日町では、全国に先駆けて中学校部活動の地域への移行を進め、26年度には全ての部活動を地域クラブへ移しました。休日の練習や大会引率を地域の指導者が担うことで、教員は授業準備や生徒指導に専念できるようになりました。生徒たちは専門的な知識を持った人から質の高い指導を受けられるようになりました。

地域展開には、教員の負担を軽減する以外にもメリットが指摘されています。京都市が小学4年生—6年生を対象に実施した調査によると、児童は「ドッジボール」「eスポーツ」など多様な活動を望んでいました。部活動ではできなかった種目に接する機会にもなります。28年度内に部活動の地域展開を目標にしている大阪府池田市では、「カーリンコン」や「フラメンコ」など聞きなれない種目が地域クラブの活動に入っています。

さらに、生徒の活動機会を維持するうえで有効な取り組みとしても注目されています。生徒数の減少により、学校単位では部員不足で廃部となるケースが増えていますが、地域単位で集めれば活動を継続できます。また、地域のスポーツクラブの指導者や競技経験者に加えて高齢者も運営に加われば、世代を超えた交流が生まれて地域コミュニティの活性化への効果が期待されています。

一方で、部活動の地域展開には問題点も指摘されています。第一に、生徒が地域クラブに参加できるかどうか、には家庭の状況が大きく影響する点です。中学校での部活動は基本的に無償か低額で参加できます。一方、日経新聞の記事によると

「中学生の保護者約3千人を対象にした笹川スポーツ財団の調査によると、民間や地域のスポーツクラブの活動に参加するために家庭が支払う額は年平均学校の運動部活動のおよそ3倍だった。」

(引用:2026年6月1日 日経デジタル 「中学部活の地域移行、困窮家庭負担増す8割」)

と述べられています。経済格差を助長する形になっているなら是正する必要があるのではないでしょうか。京都市は、活動費用を原則として本人負担としたうえで、今後どのように支援するかなどを議論するとしています。ただ、このように公的な資金による支援に頼っていては、いずれ限界が来るようにも思われます。地域に移行した活動を安定的に支える仕組みを考える必要があるでしょう。

第二に、事故やトラブルが起きた際の責任の所在が曖昧になりかねません。京都市では、地域クラブへの移行と並行して、学校施設を活用した放課後活動も始まる予定です。しかし、学校教育の一環である部活動とは異なり、地域クラブや放課後活動では、指導者、学校、自治体のどこが責任を負うのかが分かりにくくなる懸念があります。

活動中のけがや生徒間トラブル、熱中症などの事故が発生した場合、学校管理下とみなされるのか、地域クラブ側の責任となるのかは、活動形態によって異なります。外部指導者による不適切指導やハラスメントへの対応体制も課題です。

さらに、地域クラブごとに指導方針や安全管理の水準が異なる可能性もあります。これまで学校が一定の基準のもとで管理してきた活動を地域へ広げることで、運営体制に差が生まれる懸念があります。活動機会を維持するだけでなく、事故対応や責任分担を明確にした制度設計が求められています。

持続可能な地域展開のためには

これらの利点や懸念が挙げられる中で、見逃してはならないのは、実際に活動に関わる教職員や子どもたちの受け止めです。こうした制度変更は教育委員会や自治体主導で議論されることが多く、現場で活動する教職員や生徒の声が十分に反映されているとは言い切れません。

実際に、教員はどのような負担が軽減され、逆にどのような業務が新たに生まれるのか、生徒はどのような活動を望み、地域クラブへの移行に不安を感じていないのかなど、現場でしか分からない課題があります。部活動は単なるスポーツや文化活動ではなく、生徒同士の人間関係や学校生活にも深く関わります。そのため、制度づくりだけを先行させれば、現場との間にズレが生じる可能性があります。

地域展開を進める際には、教職員、生徒、保護者、地域指導者など、多様な立場の人が議論に参加できる場を設ける必要があります。アンケートにとどまらず、実際に意見を交わす場を持続的に設けることで、現場の実態に即した制度設計につなげられるでしょう。子どもたちにとって安心して活動できる環境にするためにも、真摯に現場の声に耳を傾ける姿勢が求められています。

参考記事

・2026年6月9日 朝日新聞朝刊 (京都)21面「部活移行へ最終案 愛称「京クラ」「放活」28年9月開始 京都市」

・2026年6月1日 日経デジタル 「中学部活の地域移行、困窮家庭負担増す8割」https://www.nikkei.com/article/DGKKZO96614190R00C26A6CE0000/(最終閲覧2026年6月10日)

・2026年3月28日 朝日新聞朝刊 (京都)27面「ダンス・チアやeスポーツも 京都市の部活地域移行、やってみたいのは」

・2026年3月10日 朝日新聞朝刊 (大阪)26面「教員の働き方、改善は道半ば 時間外「月45時間以下」、中学6割止まり」

・2026年1月6日 日経デジタル 「部活の地域移管、悩む現場 指導者不足や保護者負担増 国、財政支援など新指針」

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO93574440V00C26A1CM0000/(最終閲覧2026年6月10日)

・2025年12月27日 朝日新聞朝刊 (大阪)19面「部活の地域展開、負担額目安示す 月1千~3千円」

・2025年4月27日 朝日新聞朝刊 (大阪)7面「部活動の地域移行②教員の声」

・2025年4月20日 朝日新聞朝刊 (大阪)7面「部活動の地域移行①課題」

・2025年4月20日 朝日新聞朝刊 (大阪)7面「部活動の地域移行②課題」

参考文献

・2026年4月24日 京都市教育委員会 「「中学校部活動地域展開」に向けた子どものニーズに関するアンケート調査結果について」

https://www.city.kyoto.lg.jp/kyoiku/page/0000353229.html(最終閲覧2026年6月10日)

・2026年4月1日 池田市 「中学生向けの地域クラブについて(文化系)」https://www.city.ikeda.osaka.jp/soshiki/kyoikuiinkai/shakaikyoiku/shakai/boshu/19678.html(最終閲覧2026年6月10日)

・2026年5月20日 池田市 中学生向けの地域クラブについて(スポーツ系)

https://www.city.ikeda.osaka.jp/soshiki/kyoikuiinkai/shakaikyoiku/supotsu/event/15871.html(最終閲覧2026年6月10日)