高齢者運転の姿

高齢者の運転による事故は後を絶たず、今では運転免許証の延長には高齢者教習が義務付けられています。また、免許返納のニュースもしばしば取り上げられています。高齢化が進むなかで、自動車社会はどう変わっていくのでしょうか。

 

85歳以上の運転者

警察庁の2024年運転免許統計によると、運転免許の保有者数自体は19年がピークで、それからは少しずつですが減少傾向にあります。年代別では40代から50代の保有者が多数を占めていますが、注目すべきはそのさらに上の世代です。85歳以上でも89万人以上が免許を持っているのです。

実際、車を運転するわけではなく、身分証明書としての役割を果たしているだけの可能性も大いにあります。しかし、もし実際にハンドルを握っているとしたら、さすがに危険なのではないでしょうか。

6月6日の朝日新聞では、高齢者運転手による送迎サービス中の事故の詳報が伝えられています。事故を起こしたバスの運転手は85歳。まさしく、先ほどの警察庁統計での最高齢世代に当てはまります。事故直前から行動に変調が見られ、踏み間違いのような過失というよりも身体的な異常が起きていた可能性が述べられています。

では、なぜそのような世代が車を運転し続けることとなっているのでしょう。

 

運転手のなり手 集まらない現状

この記事は、自動車学校における送迎バスは運転手の多くが60~70代であると指摘しています。気になって、タクシー運転手に関して調べてみました。26年5月に全国ハイヤー・タクシー連合会が発表した「タクシー運転者賃金・労働時間の現況」によれば現在のタクシー運転手の平均年齢は60歳を超えており、バス運転手も55歳という比較的高い年齢層です。

自動車運転者(男)の賃金・労働時間比較(令和6年)

出典:令和七年「タクシー運転者賃金・労働時間の現況」, 一般社団法人全国ハイヤ―・タクシー連合会

 

このことからも運転手の高齢化は目に見えて進んでおり、このままでは安全な輸送を維持するのは難しくなっていくのではないでしょうか。

 

高齢者運転 減らない原因

送迎業の働き手不足のみならず、高齢者運転が減らない理由が他にもたくさんあると筆者は考えます。そのうちの一つとして、農村地域の車社会が挙げられるでしょう。

筆者の出身地では、免許のある人のほとんどがマイカーを持っています。車が無いと生活できないような地域に多くの高齢者が暮らし、車が日々の生活を支えています。農作業に必要だから、大きな農耕用の重機を取り扱うからということもありますが、最大の要因は、車を運転しないと買い物や通院が出来ないからです。

筆者の祖母は80歳を超えていますが、ずっと運転をしています。「もう短距離しかしない、遠出するのは電車」と言っていますが、その駅に行くのにも車が欠かせません。返納したほうがいいということは当人も分かっていますが、車が無いと生活が維持できないのです。

 

どこに行くにも車頼りの環境を変える必要があるでしょう。ただ、乗り合いタクシーを導入するとしても、結局それを運転するのも高齢者である可能性が高いでしょう。

 

老々介護ならぬ、老々運転。皆さんはどう思いますか。

 

 

〈参考文献〉

2026年6月6日付 朝日新聞(大阪)31面 「頼る高齢運転手 探る安全策」

 

2025年5月 一般社団法人全国ハイヤ―・タクシー連合会 「タクシー運転者賃金・労働時間の現況」tinginR6.pdf

2025年5月9日 警察庁交通局運転免許課 「運転免許統計 令和6年版」r06main.pdf