【特集】読むのは面倒だなんて言わないで

「〇〇の秋」

さて、○○にどんな言葉を思い浮かべましたか。食欲、芸術、スポーツ、実り、読書など挙げればきりがないほど、秋は何をするにも過ごしやすい季節です。中でも10月は活字に関する記念日が多いことに気がつきました。ちょっと調べただけでも、こんなにあります。

 

4日 古書の日

15日〜22日 新聞週間

20日 新聞広告の日

21日 新聞配達の日

27日 文字・活字文化の日(読書の日)

27日〜9日 読書週間

 

10月を振り返ってみると、記念日に合わせたイベントや取り組みも数多く見られました。15日には全国74の新聞紙面に統一の広告が、21日には新聞配達員に向けたメッセージが掲載されました。あらたにすでは、17日の「デジタルで読まれるということ」で新聞のデジタル化について考えました。

新聞週間に合わせた新聞広告
(左上:読売新聞、右上:日本経済新聞、下:朝日新聞)

 

新聞配達の日の新聞広告(赤い枠内)
「今日の配達も、お気をつけて。」
販売店従業員の折り込み作業時を想定した向きで掲載されている

 

26日から千代田区神保町で開催されている「神田古本まつり」も、「活字の秋」を盛り上げる催し物の1つです。神田古書店連盟が主催し、今秋で59回を迎えました。世界最大級の古書店街として知られる神保町が1年で最も賑わう期間です。

青空古本市と人で溢れる歩道

 

歩道にはおよそ100万冊の古本が積まれ、「青空古本市」約500mも続いていました。その多くはセール品として安く売られており、安価で良質な本を求める客が殺到しています。溢れる本と人に道を塞がれ、前に進むのがやっとでした。普段は店頭で見られないような掘り出し物も多く見つかるようです。

ワゴンに積まれた本を吟味する人々

 

意外なことに、訪れるのは年配の人ばかりではありませんでした。子連れの家族や数人で歩く学生など、幅広い年齢層の人々が集まっていたのです。「若者の活字離れ」が叫ばれる一方で、最近は雑貨店やカフェを併設した図書館の増加も耳にします。オシャレな本屋の増加に伴い、「SNS映え」を狙って書店巡りをする若者も見られるようになりました。果たして、活字をめぐる環境は衰退しているのでしょうか。

一方で、新聞のデジタル化や電子書籍の普及が進んでいます。「本屋さんが減って寂しい」「ネットで注文できるのにわざわざ足を運ぶ必要はない」という声を聞くようになりました。そもそも文字よりも映像や画像、音に触れている人は多いかもしれません。周囲を見渡しても、書くより写真を撮る、読むより動画を見る、という人ばかりです。

出典:27日 朝日新聞朝刊「本屋さんが減って寂しいですか?」

 

たしかに、映像の与えるインパクトは大きく、音楽を言葉で語り尽くすことはできません。受け身でもなんとなく頭に入ってくる動画や音楽とは異なり、文字を読むにはちょっとした労力が必要です。

でも、それぞれに特色があるように、字の良さもたくさんあります。知りたい情報を俯瞰して探すことができるのは大きな強みです。何気なく向けた視線の先に、気になる言葉を見つけることもあります。

これらの文字の魅力をより強化するのが活字です。ふらっと書店に入って、たまたま目についたタイトルに興味が湧き購入した本はありませんか。自分から知りたいと思う内容ではないけれど、紙面を開いたら面白そうだったから読み進めた記事もあるでしょう。

個人的には、用もなく本屋に立ち寄ったり、自室の本棚を眺めたりする時間は至福のひとときです。読みたいと思って購入したまま長い間眠っている本も多いのですが。ページをめくるたび、読み進めている実感が湧くのも良さだと思っています。

10月も残りわずかですが、せっかくの「活字月間」に「活字の秋」を楽しんでみてはいかがですか。

 

参考:

15日付 日本経済新聞朝刊25面「秋の新聞週間

27日付 読売新聞朝刊(東京12版)17面(特別面)「秋の読書週間」

27日付 朝日新聞朝刊(be on Saturday)10面「本屋さんが減って寂しいですか?

公益社団法人読書推進運動協議会HP読書週間

JIMBOU BOOK TOWN「第59東京名物 神田古本まつり