「きりぎりす」が言えません

昨年、自身のSNSで皮膚の病気である乾癬(かんせん)にかかっていると告白した道端アンジェリカさん。言われるまでまったく気がつきませんでしたが、「美」が求められるモデルという職業だけに、さぞ不安だったろうと思います。

誰にでも大なり小なりの悩みやコンプレックスがあります。私の場合は、滑舌です。物心ついたときからイ段の子音(き・し・ち・り)がうまく言えません。「し」と言っているのに、「ひ」のように聞こえたり、「ち」は「き」に近くなったりします。そのためタイトルにもあるように「きりぎりす」や「ちりとり」がとても言いにくいのです。

途中までまったく自覚がなかったのですが、学校に通うようになると、ときどき人に「滑舌が悪い」とからかわれたりして気になり始めました。中学校では生徒会長をしていて演説をする機会が多かったのですが、みんなにそう思われていたのかな、とあとからすごく恥ずかしくなりました。しだいに問題の発音を避けて、別の言葉に言い換えるようになっていきます。

しかし、イ段の音を言わないようにするのは至難の業です。「~しました」、「わたしは」など必ず使う言葉にも含まれているのですから。

もっと自由に、堂々と喋りたい。その思いが強くなり、この悩みの原因を調べてみました。

診断を受けたわけではないのですが、おそらく私は「側音化構音(そくおんかこうおん)」という発音障害ではないかと思います。これは「機能性構音障害」のひとつで、発音時の舌運動が正常な場合と異なるために起こります。正しい場合にはイ段を言う時に口の真ん中から息が流れますが、側音化構音では舌の位置やあごが横にずれ、息は口の端から流れ出ます。鏡で確認してみると、たしかに横に動いてしまっています。時間はかかりますが、舌や発音の訓練を積み重ねると治すことができるそうです。

ちゃんと原因があったことにほっとしました。地道にアナウンサーがやるような練習をしているのですが、長年のクセのようなもので、なかなか治りません。それでも、自分のために諦めないで頑張ってみます。

参考記事:27日付 朝日新聞朝刊(東京14版)2面(総合2)「ひと 道端アンジェリカさん(32)皮膚の病気『乾癬』を公表し、感染しないと訴えるモデル」