【特集】どうなる北朝鮮の核保有?

来月5日のトランプ大統領訪日を控え、「米朝衝突」というキーワードが多方面で飛び交っています。しかし、言葉ばかりが先行し内容が追い付いていないように感じます。そこで今一度、なぜ「北朝鮮の核保有問題」は深刻に受け止められているのかを考え直しと思います。

今年6月、米陸軍は「大量破壊兵器に対抗する諸兵科連合」と称するマニュアルを公開しました。The National Interest紙によると、この教本は大量破壊兵器(以下WMDs)を無力化するという特別な目標を、従来の戦闘概念に組み入れたものようです。地上戦の究極的な目標として特定の拠点を打ち破るとともに、技術チームがWMDsのネットワークを破壊できる環境を作り出すことに念頭を置いているようです。

このように、米軍内でも北朝鮮問題を念頭にWMDsに対抗する措置が考案されていますが、多くのシンクタンクが危惧する韓国内への報復攻撃による数十万人の被害を減らす具体的な対策は考え出されておらず、技術的にも不可能だという声も少なくありません。では、外交措置による北朝鮮の非核化は可能なのでしょうか。

米国の朝鮮半島アナリストのダニエル・ピンクストン博士は、BBCの取材に対し「北朝鮮にとっての核」は安全保障上以外に内政面で三つの役割を持っていると答えています。
1.先端技術を有することで国家をより強大に見せる「プロパガンダの象徴」
2.「経済的繁栄のシンボル」
3.あらゆるメディア、教育、エンターテインメントに浸透させることによる「国家のアイデンティティ」
上記の三点から「北朝鮮は、米国が存在保障をすることで核放棄をする」という考えが成立しないということが分かります。また金王朝は、体制存続のため超人的な神話を国内に広めている結果、核兵器について、交渉の場で妥協することができません。よって合理的に考えれば、好条件の提示であっても内政面での懸念から拒否する可能性も高いのです。

私が大学で外交政策論を教わっている織田邦男元空将は、先制攻撃のシナリオとして「米軍は米本土や世界各地から航空戦力を日本、韓国、ハワイ、グアムに展開させ攻撃準備を行う。それと同時に、NEOと呼ばれる『非戦闘員退避作戦』が行われる」とし、「NEOが行われていない現時点ではすぐに戦闘になるわけではない」と冷静な分析をしています。

また織田氏は、米国が行える外交的オプションとして「核保有を容認するが、アメリカに到達しうるICBMは放棄させる」シナリオがあり、現状では選択される可能性が高いと指摘しています。つまり米国に対する核の脅威は無力化するが、日韓への影響力は維持させるということを意味します。日本としては、北朝鮮との交渉の場で優位性を失うため武力衝突と並んで最悪な結果の一つとなるでしょう。

以上のことから日本は厳しい状況のもとで「北朝鮮問題」に対応しなくてはなりません。欧米の戦略家たちが言う「核抑止は使用されていないからこそ有効である」という言葉を今一度認識しなおす必要があるでしょう。

クラウゼヴィッツがこの世に残した「流血を覚悟して、初めて流血無き勝利が得られる」という言葉は、戦争と平和が表裏一体のものであることを思い起こします。

参考記事:
29日付 朝日新聞朝刊(14版)3面(総合3)「核禁条約触れず 棄権続出」
 同日付 日経新聞朝刊(13版)5面(総合3)「核保有認める取引せず」
 同日付 読売新聞朝刊(14版)2面(総合)「米戦力誇示 北へ圧力」
19日付 The National Interest “The U.S. Military Has Big Plans If It Must Destroy North Korea’s Nuclear Weapons”