〈特集〉JMS2023 未来のモビリティを考える(2)テクノロジー編

先月26日に開幕した「ジャパンモビリティショー」(JMS)では、各社こぞって最新のテクノロジーを展示しています。

全4回にわたるJMS特集。2回目は「テクノロジー編」です。

 

◯「2024年問題」

トラックドライバーの時間外労働の規制強化に伴い物流の停滞が予想される「物流2024年問題」。

NX総合研究所の試算によると、2024年度に約14%、2030年度には約34%の輸送能力が不足するといいます。

自動運転トラック技術を手掛けるTuSimple JAPANは、自動運転システム「TS-Box」を出展しています。このシステムは既存のトラックへの後付けが可能で、自動運転レベルのレベル2(部分的な自動運転)以上に対応しているといいます。

また、日本初となる東京-名古屋間でレベル4(高速道路など限定された場所での完全自動運転)相当の自動運転トラック走行テストに成功したと発表し、実証実験の様子を出展ブースとYouTubeで公開しています。

ブース担当者によると、多くの運送会社や自動車メーカーから良い反応を得ているといい、「2024年問題」の解決策の一つとして業界からの期待の高さが伺えます。

自動運転システムを搭載したトラック(10月25日筆者)

 

◯異業種の出展

今回、会場では異業種の出展も目立ちました。

非鉄金属大手の住友金属鉱山は、太陽光を活用する素材「SOLAMENT」を発表しました。太陽光などに含まれる近赤外線を吸収する微粒子「CWO」をリニューアルした素材テクノロジーです。

CWOは透明性が高く、自動車の窓ガラスやビニールハウスに使用することで、太陽光を吸収させて室内の温度上昇を抑えるといった用途で活用されています。リニューアルによって、知名度を高め、実用化の幅を広げることを目指しています。

太陽光を吸収するだけでなく、発熱させることもできるといいます。会場では、その特性を示す試作モデルとして羽毛を使用しない透明なダウンジャケット「SOLAMENT DOWN-LESS DOWN JACKET」を展示していました。人目を引く近未来的なデザインで、実際に試着できます。

「SOLAMENT DOWN-LESS DOWN JACKET」(10月25日筆者撮影)

また、ブースではSOLAMENTを用いた軍手に光を当てるデモンストレーションも。筆者も実際に体験しましたが、わずか数秒で触ってわかるほどに温度が上昇しました。

広報担当者によると、太陽光の活用を前提としているため、完全に他の防寒素材に取って代わるものではないといいます。しかし、防寒着を軽量化できるうえ、羽毛を使わないため環境にやさしいといったメリットがあります。

一般的な軍手(左)とSOLAMENTを用いた軍手(右)(10月25日筆者撮影)

 

EVへのシフトやIT大手の参入など、大きな変革期に直面する自動車業界。日本勢は海外勢に比べ、対応の遅れが指摘されています。

こうした中、「モーターショー」は「モビリティショー」へと姿を変えました。異業種を巻き込み、「オールインダストリー」で巻き返しを図っています。

 

参考記事:

10月26日付 日本経済新聞朝刊3面(総合2)「ソフト・AI「クルマ」変える ジャパンモビリティショー開幕 感情解析し演出/自動運転、低コスト」

10月26日付 読売新聞朝刊(東京)2面(総合)「「モビリティショー」きょう開幕」

10月26日付 読売新聞朝刊(東京)8面(経済)「モビリティショー 最新鋭EV続々」

10月26日付 読売新聞朝刊(東京)9面(経済)「「移動」の在り方 提案 モビリティショー 快適さ・エンタメ性重視」

10月26日付 朝日新聞朝刊7面(経済・総合)「乗り物の祭典 モデルチェンジ途上 「未来の技術示せる」「車屋なので、それ以外は…」 きょう開幕」

参考資料:

持続可能な物流の実現に向けた検討会「持続可能な物流の実現に向けた検討会 最終取りまとめ」

Japan Mobility Show 2023|ホームページ

SOLAMENT(ソラメント)|住友金属鉱山株式会社

TuSimple: Autonomous Trucking