“Where dreams come true” 課題抱えるディズニー、動画配信事業で成長の道探る

米ウォルト・ディズニーが10月16日に創業100周年を迎えました。

ディズニーは、ウォルト・ディズニー氏と兄のロイ氏が1923年に共同設立した会社から始まります。当初はアニメスタジオとして設立され、「白雪姫」を公開しました。のちに米カリフォルニア州に「ディズニーランド・パーク」を開業するなど、今では世界6都市に12のテーマパークを展開しています。

日本では東京ディズニーランド(千葉県浦安市)が今年で開業40周年を迎え、東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」のオープンが来年6月6日に決定するなど、海外展開にも意欲的です。

東京ディズニーランド ワールドバザール エントランス付近で筆者撮影

 

ディズニーが世界中の人々を楽しませ続ける一方で、経営面は必ずしも右肩上がりとは言えません。時価総額は2021年に3500億ドル(約52兆円)に達したこともありましたが、23年4月~6月期の最終損益は4億6000万ドルの赤字となるなど、苦戦を強いられています。

なお11月1日時点での時価総額は1483億ドル(約22兆円)で回復傾向にあるものの、特に動画配信部門で伸び悩んでおり、動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」は、19年からの累積営業赤字が108億ドル(約1兆6000億円)に膨らんでいます。

一方、今月1日には動画配信サービス「Hulu」の全株を取得すると発表しました。アクティビスト(物言う株主)からは、さらに進めてディズニー+と統合すべきだという提案が出されています。ディズニー側は1つのアプリでディズニー+とHuluを視聴できるサービスの準備を進めており、さらなる再編の加速と事業の拡大が予想されます。

 

ディズニーの特徴のひとつは、キャラクターやクリエーター陣などコンテンツの供給に強いことでしょう。コンテンツ産業全体の市場規模は約14兆円程度で、自動車産業のわずか5分の1です。しかし、コンテンツは他の商品やサービスと組み合わせることで大きな経済効果を生み出す潜在力があります。

現に人気ゲームのポケットモンスターは、ゲームソフトの売上高が約930億円なのに対し、カードゲームで約1200億円を売り上げ、映画では約220億円の興行収入を記録しています。さらに食品や玩具などの関連商品を販売することで約7000億円の需要につなげ、その経済波及効果は2兆円を超えると試算されます。

 

Where dreams come true

ディズニーランドは「夢がかなう場所」として新しい発想と想像力で成長し、世界中の人に夢と感動の体験を提供し続けてきました。

動画配信市場という場所でも変わらずにディズニーの理念を受け継いでいくことができるのか。経営陣の手腕が問われています。

 

【参考記事】

2023年10月16日付 読売新聞朝刊4面「米ディズニー 成長100年 遊園地やアニメ娯楽変革」

2023年10月17日付 日本経済新聞2面「100歳ディズニー、魔法と試練 コンテンツの帝王、世代問わず/時価総額わずか2年で半減」

2023年10月27日付 読売新聞朝刊25面「新エリア開設 来年6月6日 ディズニーシー」

2023年11月3日付 日本経済新聞朝刊[東京12版]15面「米ディズニー、Hulu全株取得」

【参考資料】

ウォルト・ディズニーの見た夢/東京ディズニーリゾート

ウォルト・ディズニー(Walt Disney)株価/日経会社DIGITAL