突撃!隣の学生さん 「プレーを通じて内面の充実を」明治大学フリースタイルフットボール Pelusa

サッカーの技術を基礎とし、楽曲に合わせ演技を行う「フリースタイルフットボール」。リフティングなどの技とブレイクダンスの要素を掛け合わせ、ビート感の強い楽曲に合わせて華麗に繰り広げられるパフォーマンスは見る人を飽きさせません。形式はさまざまで、個人プレーや三人一組で順々に技を披露するなど、演技者のアイディアに委ねられます。

今回は、学生サークル「明治大学 Freestyle Football Pelusa」に所属するフリースタイラーの方々を直撃しました。「サッカーの新しい楽しみ方」を日々模索する彼らは、アスリートであると同時にパフォーマーとしての自覚を強く感じさせます。

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■フリースタイルフットボールとは?

立春も過ぎた2月某日。主な練習場所である東京・代々木公園に向かうと、さっそくサッカーボールを蹴る音が聞こえてきました。とはいえ、サッカーの試合でよく耳にする「ドスッ、バシッ」というような太い音ではありません。近づくと「ポンポン」と軽快に弾むボールを、背中や腰で受け止め、ときには寝そべりながらつま先で操る姿が見えてきました。総勢十数人のメンバーのうち、当日集まったのは副代表を務める大越光さん(経営学部・2年)を含む4名。自主練習で磨いた技を、週に一度の集まりで披露しあうのが通例とのこと。公園入口で繰り出される技の数々に、目を奪われる通行人も多く見られました。

サッカーから派生し、その技術を楽曲に合わせて行うフリースタイルフットボール。ヨーロッパでは、もともとは大道芸のひとつとして親しまれてきました。日本フリースタイルフットボール協会の公式ウェブサイトによれば、2004年にスポーツ用品メーカーのナイキ社がフリースタイルに特化したイベントを開催したことが、競技人口を増加させる契機となったとしています。また2012年9月にイタリアで開かれた第3回世界大会では、日本代表として出場した愛媛県出身の徳田耕太郎さんが優勝し、参加53カ国の頂点を極めました。その模様は各メディアでも報じられ、国内での知名度も上がりつつあります。

自己表現や芸術性が求められるスタイルゆえ、競技サッカーとは性格が少々異なるこのスタイル。しかし、サークル創設者の本間一哉さん(経営学部・3年)は「あくまでもサッカーの枠をはみ出さない」ことを信条にしています。それは、プレーヤーのほとんどが競技サッカー出身者であることと無関係ではありません。元々慣れ親しんだサッカーの「新しい楽しみ方」として、形式の発展を目指します。ボールをいかに華麗にコントロールするかを演技の核とすることで「初めて見た人に『サッカーが上手い人が遊んでいるんだな』という印象を与えられれば」と本間さん。サッカーという競技の延長線の上で新たな動きを開拓することも、フリースタイルフットボールの魅力のひとつに数えられます。

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■出会いは「公園でたまたま見かけた」

高校卒業後、大学に入学した本間さん。他の学生同様に、自分の興味に合うサークルを探すもどれも魅力に欠ける…。「どうせやるなら本気でやれることがほしい」と考えていた矢先、新宿の中央公園でパフォーマンスを見かけます。元々競技の存在自体は漠然と知っていたものの、実際に目にするのは初めてでした。この偶然の出会いに運命を感じ、本格的に取り組むことを決意したそうです。以来、個人で活動するパフォーマーとの共同練習に参加しては仲間を増やし、そして本間さんによると、現在では全国唯一の大学サークルを立ち上げるまでに至りました 。

団体単位では、明治大学と早稲田大学のラグビー対抗試合「早明戦」のオープニングアクトや学園祭の出演を主な活動としています。また競技大会への個人エントリーや、社会人や学生で構成される他チームとの練習にも顔を出すメンバーもいます。サークルの域にとどまらず、同じ競技を通じて得た仲間と切磋琢磨することは、活動を続ける上でよい刺激になっているそうです

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 ■一人前になるには「最低2年」

演技を行うフリースタイラーのほとんどはサッカー経験者。8才から高校卒業までの約10年間をサッカーに捧げた本間さんのように、他のメンバーも中・高校時代は広いフィールドのなかでボールを追いかける日々を送っていました。しかし、その経験が上達に結びつくかは別問題。リフティングが基本技術とはいえ、目標は演技をすること。つまり、観客が驚くきらびやかな動作を加える必要があります。また、エレクトロやヒップホップ系の楽曲に合わせて演技を展開するため、リズム感覚を養うことも大切です。では、公の場で披露するにはどれくらいの年月を要するのでしょうか。本間さんは「最低1~2年はかかる」と考えます。基礎的な技術は半年、また小さなイベントでの演技なら1年程度と線引きしているそうです。演技は緊張との戦い。演技中の失敗は、練習と努力と場数で防ぐほかありません。日々の積み重ねが、躍動感あふれるパフォーマンスを下支えしています。

 

■プレーを通じて内面の充実を

「ボールは友達」よろしく、暇さえあれば球を相棒に技を磨きつづけるPelusaのみなさん。2013年4月には大学の公認サークルになることも決まりました。創設3年目、サークルは新たな局面を迎えます。スタイルの普及や、団体を大学に定着させることも大きく掲げる目標です。しかし、それでも大切なのは「楽しむこと」。覚えた技を仲間と見せ合い、観客に披露して反応を楽しむ。そして「多くの人とつながることが、フリースタイルフットボールの醍醐味。プレーを通じて内面の充実を図りたい」と本間さん。そばにいた大越さんがうなずいてみせます。

 

スタイルへの熱い信念を胸に宿らせ、ボールと身ひとつで美技を連発するフリースタイラーのみなさん。パフォーマンスがコミュニケーションとなる瞬間を求めて、研鑽を積む日々はこれからも続きます。

(取材:横川結香/船崎桜)

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