突撃!隣の学生さん 「大好きな農業をやって生きていきたい」関西大学4回生・東祥平さん

今回の「突撃!隣の学生さん!」は、半農半大学生の関西大学4回生東祥平さん(21)です。彼は農業に取り組む一方で、「島おこしプロジェクト」や大学生が夢を語る「夢むすび会」にも関わっています。現在は休学中なので「ほとんど農業者少し学生」というところでしょうか。東さんは農業を生きる道と定めているそうです。東さんはなぜそれほど農業に惚れ込んだのでしょうか。そしてこれからその道をどう歩もうとしているのでしょうか。

大阪府富田林市に借りている畑で、自然農という自然本来の姿になるべく近い形で作物を育ています。自然農は人の手をあまり加えません。農薬を使わないのはもちろん、耕しもせず、草もほとんど抜きません。化学肥料はもちろんのこと、有機肥料も施しません。

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(写真:東さん)

 

楽しそうに現在の生活を語る東さんですが、高校時代はつらい思いをしたそうです。高校に入学はしたものの雰囲気になじめず1年で退学。その後、カナダの高校に留学するも、それも1年で帰国。ずっともやもやしていたそうです。しかし大学だけは出ようと決断し、高校卒業程度認定試験を受けて大学へ進学します。そこで弓道に出会いました。大学の弓道部に入り、主将として団体戦全国2位の成績を残します。そして一昨年の秋に「弓道しかやっていなかった大学生活」から就活への切り替えをはかりました。

ところが、企業の合同説明会に行った東さんは強く違和感を覚えます。自分は会社勤めして人の下で働くのは嫌だ!」。そして就活をやめ、大学も休学してしまいます。自分のやりたいこと、自分に向いていることを見つめ直すため、春休み地域活性化インターンに参加しますが、ここでまた違和感に襲われます。「自分は自分のやりたいことしかできない人間」「でも自分は何がやりたいんだろう」。悩み続けました。そんな時、ふと思い出したのが高校生から興味を持っていた農業でした。実家は自然に囲まれた田舎にあり、幼い頃から自然が大好きで魅力を感じていました。「農業やりたい! やってみよう!」。

 

4月、実家の自給用の小さな畑を手伝うことから始めました。たまたま地元の自然食品店で川口由一さんの提唱する自然農を知り、これだと思ったそうです。三重県名張市にある赤目自然農塾に5月から通い始め、7月にはハワイで画家の小田まゆみさんが営むジンジャーヒルファームに微生物農法を学び、9月から今の畑を借りて自然農を始めました。東さんは語ります。「自然は完璧なシステムです。人間は間違えるけど、自然は完璧で絶対の存在です。だから人間は自然を相対視してはいけない。余計なことをしてはいけない。野菜を栽培するときも、耕したり、草を抜いたり、害虫を追い払ったりしなくても、大地は、作物を豊かに実らせてくれます」。昨年の秋、実際に草の中にできた野菜を収穫した時は感動したそうです。今年も春の種まきに向けて準備を始めました。

半農半大学生をしながら、東さんは再び将来について考え始めました。そして二つのテーマに思い至りました。一つは「自然と共生する社会をつくりたい」、もう二つは「当たり前に夢を追える社会をつくりたい」ということです。

 

自然と共生する社会づくりのフィールドとして東さんが考えているのは、農業人口ゼロで耕作放棄地が広がる瀬戸内海のある島です。小田まゆみさんとの縁から、4月からから始まる島おこしプロジェクトに参加することになりました。このプロジェクトは、次の時代の社会モデルになるようなコミュニティーをつくることを目指しています。今年復学し大学を卒業した後はその島へ移住し、大好きな農業をやりながら生きていこうと考えているそうです。

 

2つ目のテーマ「夢を追える社会」を達成するために、9月から東さんが始めたことがあります。若い世代が月に一度集まって、のんびり食べて、飲んで、そして夢を語り合う「夢むすび会」です。1月に京都で行われた5回目の夢むすび会には関西の大学生を中心にリピーターから初参加者まで若者14人が参加しました。夜ご飯を食べながらしばらくおしゃべりした後、スケッチブックを手にそれぞれの夢を発表しあいました。東さんは「人の夢はその人の生きてきた歴史のようなもの。夢を語っている人はとても楽しそう。皆の夢を聞くのも楽しいし、皆が楽しそうにしてるのもうれしい。」と話します。「旅」「海外で働く」など、それぞれの夢を発表した後また自由におしゃべりをし、参加者はたくさんの夢に触れ、和やかながら刺激的な夜を過ごしました。

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(写真:夢むすび会の様子)

 

最後に彼にこれからのことを聞いてみました。「いまぼくは自分のやりたいことだけやって生きていけるか実験をしているんです。世間一般では、夢を追ったり、自分のやりたいことだけをやっては生きていけないって言うけど、それって本当なのか?って」。東さんはそう語りました。それでも困難にぶつかる時もあります。そんな時、彼はどうするのでしょうか。彼はこう答えました。「ぼくは弓道部で『行き詰まる』ということが無いことを学びました。考えられる選択肢が全部ダメでも、行き詰まったところで次の選択肢が見えてくる。遠くから見たら行き止まりでも、そこまで行けば次の道が見えてくる。つまり歩き出さないと見えてこない。失敗なんてなくて、進まないから失敗なんです。自分の思いを貫いたら、自ずと道は開けるのではないか、と」。弓道部で得た精神と自然と農業と夢への熱い思いを胸に、彼の人生は続きます。

 

東さんfacebookページ:http://www.facebook.com/shohei.azm?fref=ts
東さんブログ:http://shohei-tsuchi.blogspot.jp

 

(学生編集長:藤岡 文)

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