AI社会の中で、必要なのは「自分」視点

日々、様々な分野で注目を集めるAI。作業の効率化を促進し、社会において重要な役割を担うようになりました。その影響からか、人間が機械によって代替され、社会に猛威を振るうといった未来予想図が、映画や小説などで描かれています。

科学技術が人間に与える危害に危機感を抱き、しばしば「人間vsロボット」といった対立関係が映し出されています。一方、それとは対象的に「ロボットが人間を守る」ものも登場し、イメージ形成をはたらきかけています。そして、AIがどのようなロジックで結果を出したのかが分からない、「ブラックボックス問題」が注視されています。

人間は技術に対して恐怖や不安、期待や親しみなど、それぞれ違った意見を持っています。しかし、ここ最近実感するのは「技術によって発展する社会の中で、自分はどのように接し、どういう日常を過ごしていくのかが不確実だ」ということです。つまり、肝心な「自分」に目が向いていません。

私が所属するゼミで面白い話がありました。資生堂の化粧品ブランド「マジョリカマジョルカ」が提供する「MAKEUP COMPASS」というサービス。スマートフォンから写真を撮り、いくつか質問に答えると自分に合ったメイクを紹介してくれます。ここで問題になったのが、AIが無意識の内に自分の美意識を決めつけているのではないかということです。Twitterで使用した人の反応を見ても、ほとんどが肯定する意見でした。

「AIが決めたのだから正しい」という考えは、個人の意思決定に多大な影響を与えるでしょう。しかし、それに気付かず、盲目的に信じるのは危険です。何故なら、このような思考回路に陥ると、物事には必ず正解があると錯覚してしまうからです。

科学技術の発展により、ますます激しく動く社会。私たちが考えるべきことは「技術が人間にもたらすこと」よりも、「自分が社会の中で、どう在りたいのか」が先ではないでしょうか。

「技術は単なる道具だ」という認識が、私たちに欠如している考えだと思います。

参考記事:

8日付 読売新聞朝刊 13版11面(大阪)「「悪意あるAI」抑えるのが社会」

同日付 読売新聞朝刊 13版6面(大阪)「AI駆使し 発想豊かに」

同日付 日本経済新聞朝刊 27面(大阪)「科学技術と人 共存探る」