育休義務化は時期尚早か

「女は家を守り、男は外で働く。共働きの家庭が増えた今、このような考え方は時代遅れだ」

多くの人がこんな認識を持っていることでしょう。一方で、家事・育児を女性がやるのは「当たり前」であり、男性には「食器洗いするなんてえらいね」「イクメンだね」と、まるで手伝うことが特別であるかのような言葉をかけてしまう。このような風潮もどこか残っているように感じます。

家事・育児の主体は女性だとの価値観は簡単に変わるものではありません。女性自身も家のことは自分主導でやろう、そう思っている人は少なくないと思います。では、女性は何を求めているのか。それは、手伝うことが特別なことではなく、「当たり前」のものになることではないでしょうか。

とは言うものの、果たして男性側に手伝う時間はあるのでしょうか。欧米の父親は、家事と育児に1日2-3時間かけているのに対し、わずか1時間程度と世界最低水準を記録する日本。背景には、男性の過剰な働き方があると言われています。朝早くに家を出て、夜遅くに帰るような生活を毎日続けていては、手伝うことは出来ません。

最近、男性に育児休暇の取得を義務付けるかを巡る議論が熱を帯びています。しかし、育児休暇を義務付けて、状況が改善するとは思えません。問題の根源のひとつは、日本のオーバーワークです。日々の定時退社を促し、家庭で過ごす時間を増やすなどの取り組みに力を入れる方が、よほど意味のある改革だと思います。育休を最初から取得するつもりがなかったと回答する男性が7割にも上る調査結果を見ても、家事・育児への関心が高くないのは明らかです。また、家にいても何を手伝えばよいか分からない人も多いはずです。この現状で、形だけ育休を義務付けるのは時期尚早だと考えます。

子育ては、何年も続くものです。一定期間だけ頑張るのではなく、手伝うことが当たり前になるように、そして男性の間でも家事・育児の悩みの話題が飛び交うのが日常になるように。毎日、家庭を顧みる余裕を持てるような働き方改革が、また父親が悩みを気兼ねなく相談出来る場所が求められています。「育休義務化」の劇薬を投与するのではなく、じっくり問題について考え、効果が長続きする薬を調合することが重要なのではないでしょうか。

参考記事
18日付 日本経済新聞夕刊(3版)2面「デンシバSpotlight 男性の育休義務化」

参考資料
NHK解説委員室「父親の育児と夫婦関係」
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/269415.html
「男性の育休義務化」について、どう思う?【ワーママ座談会】
https://www.parthaken.jp/column/work_style/dansei-ikukyu/