「市民ではない府民」の声は届いていない

大阪市民の手によって大阪の未来が決まる。過言ではないでしょう。大阪市を廃止し、現在24ある行政区を5つの特別区に再編する「大阪都構想」。その是非を巡る住民投票が、ちょうど1カ月後に迫っています。

住民投票の対象者は「20歳以上の大阪市民」です。現在、市内で開催されている住民説明会も、市民のみが参加できます。当然です。廃止されるのは大阪市であり、再編された特別区の行政サービスを受けるのも、現在の市民たちです。住民投票も当事者である大阪市民のみが対象で問題はありません。

と、先ほどまでは考えていました。今朝の朝日新聞の投書。府内に住む女子大生(21)が、住民投票の対象を大阪市民のみとすることに異論を唱えています。彼女は大阪市民ではありません。ですが、通っているのは市内の公立大学です。橋下徹市長は、都構想が決まれば、この大学と府内にあるもう一つの公立大学を統合する方針です。自分の学校が消えるかもしれないのに、見守るしかできない─。「大阪の未来を大阪市民だけで決めないで下さい」と、投書は結ばれています。

「この本は、主として橋下徹大阪府知事の主張する『大阪都構想』について述べたものです。

しかし、問題は大阪だけのことではありません。日本全体の仕組み(体制変更)にもかかわる重大問題です。」<橋下徹、堺屋太一(2011)『体制維新─大阪都』(文春新書)>

「問題は大阪だけのことではありません」。橋下市長と堺屋氏の共著の冒頭には、はっきりとそう書かれています。ここで指す「大阪」とは、大阪市のことなのでしょうか。だとすれば、先述の彼女のような「市民ではない府民」への説明が尽くされているとは言えません。

 

参考記事:

17日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)オピニオン面

同日付 日本経済新聞朝刊(同版)社会面「大阪のかたち」