台風19号 命を守るための行動を

自宅でこれを書いている今も、外からは「ザーザー、ゴーゴー」と激しい風雨が続いている。気象庁が12日午後4時40分に発表した情報によると、台風19号の中心気圧は945hPa。非常に強い勢力を保ったまま本州に上陸すれば、記録がある1991年以降では初めてのことだ。命を守ることを最優先に行動する必要がある。

昨日はアルバイト先で「交通機関がストップするので明日は臨時休業。従業員は不要な外出を控えるように」と上司から促された。埼玉県所沢市に住む同僚は「東日本大震災の時も最寄りを走る西武線は動いていたのに…」と驚いていた。新宿を発着する西武、京王、小田急、JR、地下鉄の各改札を見て回ると、各社とも計画運休の知らせを張り出していた。

特にJRでは英語、中国語、韓国語でも呼びかけており、さらに切符売り場で払い戻しの対応をするなど、観光客への対応も見受けられた。西武線の改札では沿線で予定されていたイベントの中止も告知されていた。そういえば友人が「予定されていたマラソン大会が中止になってしまった」と残念そうにしていた。三連休が台無しになった方も多いはず。その影響は計り知れない。

沿線のイベントの中止を知らせる掲示。11日、東京都新宿区の西武新宿駅で筆者撮影

多言語表記で計画運休を知らせるJRの貼り紙。

みどりの窓口は切符の払い戻しをするため多くの人で混み合っていた。上記2つの画像はいずれも11日、JR新宿駅で筆者撮影。

地下鉄の中でも地上を通る路線では計画運休の実施を知らせていた。11日、東京メトロ東西線早稲田駅で筆者撮影。

東北出身で台風に慣れていない筆者は、停電、断水、浸水など、あらゆる被害を想定して備えた。家電量販店でラジオを買い、自宅近くのスーパーで3日分の飲食料品を購入した。ラジオ売り場も食品売り場も品薄になっていた。皮肉なことに増税後の「駆け込み需要」になったのかもしれない。

家電量販店のラジオ売り場には品切れのものも。11日、東京都新宿区で筆者撮影。

台風に備えて飲食料品を買う人が詰めかけ、スーパーの棚からは商品が消えた。11日、相模原市南区で筆者撮影。

日付が変わって12日になると、風雨が強まってきた。朝刊を取るために新聞受けへ向かったほんの一瞬だけでも、全身がずぶ濡れになった。折り込みチラシの中には新聞社と販売店からの「夕刊の配達は中止する」との知らせもあった。

新聞配達について知らせる折り込み。12日、筆者撮影。

首都圏を中心に工場や店舗は営業休止、鉄道やバスは計画運休を実施している。日本経済新聞朝刊によると、百貨店、スーパーマーケット、コンビニは軒並み営業停止。飲食店や飲食宅配サービスの「ウーバーイーツ」も終日休止だという。東京ディズニーランドや大阪のUSJも休園である。経済活動よりも従業員の安全を確保する動きが浸透しつつあるようで、ホッとした。しかし名古屋に住む友人はTwitterで「バイト先に問い合わせても『出勤日だ』の一点張り。ふざけている」と憤っていた。テレビでは東海地方の被害状況も伝えられていた。災害時の安全確保は企業の義務として法整備する必要があるのではないか。

臨時休業を知らせる貼り紙。11日、東京都新宿区で筆者撮影。

計画運休により閉鎖された小田急電鉄の駅。12日、相模原市南区で筆者撮影。

台風によって臨時休業となったコンビニエンスストア。12日、相模原市南区で筆者撮影。

筆者の住む神奈川県相模原市では、あちこちで避難指示や避難勧告が発令されている。だが午前中に2、3回近所の防災無線が鳴ったものの、雨音で何を言っているのかさっぱり分からなかった。午後3時30分には東京、神奈川、埼玉、群馬、長野、山梨、静岡の7都県に大雨特別警報が発令された(その後、特別警報の発令範囲は拡大している)。テレビでは「(相模川の上流にある)城山ダムで緊急放流を実施する」と報じられた。最新の情報では午後10時から放流を始めるという。流域では大規模な水害の恐れがある。命を守るため、最大級の警戒が求められている。自宅は避難対象にはなっていないものの、隣の愛川町に住む友人は「これから避難をする」という。LINEでは多摩川や相模川近くに住む友人たちと互いの安否を確かめ合っている。自分の居場所を知ってもらうことで、落ち着いた行動ができそうだ。

ところで「命を守るための行動」とは具体的に何をすれば良いのか。日本防災士機構がまとめた「防災士教本」には身近でできる水害対策として以下を挙げている。

〈住宅の備え〉
①浸水が想定される区域等を確認する
②地名と地形から危険を知る
③家の浸水を予防する
④水から生活を守る
(床上浸水に備え生活必需品は2階へ移動する)
⑤家財を保全する

〈日頃の備え〉
①家族で話し合いを
②雨水排水溝の手入れを怠らない
③非常持ち出し品を用意する
④水害体験を参考に
⑤地域で高齢者のサポートを

〈豪雨時の備え〉
①気象情報に注意する
②インターネットを活用する
③迅速に避難する
(逃げ遅れた場合は頑丈な建物の上階へ「垂直避難」を)
④屋外での危険を避ける
(単独行動は避け、ロープで身体を支え、棒で足下を確認する)
⑤運転での危険を避ける
(アンダーパスは浸水している危険があるので避ける)

既に外は暗い。避難所まで行く道のりに危険がある場合は「垂直避難」が有効になる。今晩は助け合いの夜になるだろう。たとえ危機が迫っても、自らの命を守る行動を諦めないで!

参考記事:
12日付朝日新聞朝刊(東京14版)1面「台風19号 今夕上陸の恐れ」他、台風関連記事
同日付読売新聞朝刊(東京13版S)1面「台風上陸へ」他、台風関連記事
同日付日本経済新聞朝刊(東京12版)1面「台風計画運休 最大規模に」他、台風関連記事
11日付朝日新聞夕刊(東京3版)1面「台風 大規模計画運休」他、台風関連記事
同日付読売新聞夕刊(東京3版)1面「JR、首都圏計画運休」他、台風関連記事

参考資料:
・特定非営利活動法人 日本防災士機構「防災士教本(平成29年第4版)」
・NHKテレビ12日放送 台風19号関連情報