日中関係 新たな時代へ

先週末、東京の代々木公園で「チャイナフェスティバル2019」が開催されました。中国大使館が主催するこのイベントは、中国を体感する日本国内最大級の交流の祭典です。伝統舞踊や有名歌手による歌の披露があった他、数多くの中華料理店が屋台を出店しており、筆者も麻辣湯(マーラータン)という中華麺や羊肉の焼き串に舌鼓を打ちました。

中華料理の屋台(9月21日、チャイナフェスティバルにて)

 

2日間で14万人が来場して大きな盛り上がりが見せたチャイナフェイスティバルは、現在の良好な日中関係を象徴するようなイベントだったと思います。二国の関係はこれまで長期間にわたり停滞気味でした。05年、10年、12年には大規模な反日デモが起きました。首脳会談が長期間開催されなかったり、開催されても首脳同士が笑顔なく握手して記念撮影に臨むなど、一定の距離がありました。しかし、近年の中国の態度は、今までの揉め事がなかったかのように友好的です。外務省の報道官でさえも、日本のことを直接的に非難することは少なくなっています。

私は去年、北京と杭州に10日間ほど旅行しに行きましたが、「我是日本人!」と名乗ると、日本語学習者ではない人でも親切に接してくれることが多かったように感じます。愛国主義教育を受けた30〜40歳前後の世代の人でも嫌がらせをしてくる人はほぼおらず、現在の大学生世代では大半が日本に対し良いイメージを持ってくれていました。

このような中、日中間で新たな政治文書を締結しようとする動きがあります。孔絃佑駐日大使は、日本経済新聞のインタービューで「第5の文書」締結について言及しました。現在、日中間には4つの政治文書があります。国交正常化に伴い締結された1972年の日中共同声明、78年の平和友好条約、98年の日中共同宣言と08年の日中共同声明です。これらに加えて、来年の習近平国家主席の来日に合わせ、戦略的互恵関係を深めるための文書を結ぶ用意が進められているのです。

近年の良好な二国間関係を鑑みると、経済的な関係を安定させるため、新しいステージに入っても良いような気がします。対米関係悪化に伴う打撃を受けている中国と将来的に経済が縮小する日本、双方にとってメリットがあります。

ただし、提携によって全てが好転する訳ではなく、安心は出来ません。98年の共同宣言を結んだ江沢民総書記は、歴史問題に関する発言で日中のすれ違いを増幅させた他、08年の共同声明の後も、尖閣諸島問題に端を発する反日デモが起きました。相手を刺激せず良好な関係を保ち続けるためには、双方に不断の努力が求められます。安全保障の面では譲歩することなく、日米同盟を維持していく必要もあります。

日中関係をどのような距離感で築いていくのか。安倍首相の外交戦略に引き続き注目です。

 

参考記事:

28日付 日本経済新聞朝刊(東京13版)9面「日中「第5の文書」検討」

 

参考ウェブページ:

Yahoo!ニュース「日中平和友好条約40年「第5の政治文書」で尖閣は守れるか」

https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20180812-00092899/