8月下旬の昼下がり、東京・神保町。
週末だったその日は古本を買い求めにやってきた人たちで賑わいを見せていた。かくいう筆者は古本とは別の本を探しにこの街に降り立った。K-文学、つまり韓国文学だ。海外文学の一つとして脚光を浴びている韓国の文学に焦点を当てたい。
CHEKCCORIの入り口付近。8月31日、筆者撮影。
地下鉄神保町駅から徒歩1分。A5出口をでて横断歩道を渡るとお目当てのブックカフェが見えてくる。『CHEKCCORI』だ。一階のお蕎麦屋さんが目印で、脇の階段を上り、ドアを開けると、壁にずらりと並んだ本が来訪者を迎えてくれる。「ミステリー&SF特集」「近日邦訳予定の本」などカテゴリー分けされていて見やすい。初めて訪れた筆者も心を躍らせた。
私の一日をご紹介したが、ここでK-文学をめぐる状況について報告したい。K-文学が日本で注目されるようになったのはここ最近のこと。火付け役は33歳の主婦の半生を描いたフェミニズム小説「82年生まれ、キム・ジヨン」だろう。朝日新聞でも取り上げられていた。4月の記事では日本でも13万部を超えるヒットになっているという。また日本経済新聞には喪失の物語を集めた短編集「外は夏」の批評記事も出た。そして本日の朝日新聞特派員メモでは韓国の詩人について言及していた。
『CHEKCCORI』での話に戻ろう。店の奥に入ると、邦訳本や詩、韓国語学習のための本など様々なコーナーが。来店前のイメージと異なったのは、邦訳をしていない韓国語のままの本が想像以上に多く置いてあったことだ。韓国語が自由に使える人から言葉を知らない人まで幅広い客層が楽しめるようになっていた。
CHEKCCORI店内。8月31日、筆者撮影
ぐるっと見て回っているうちに、女性の店員さんにお話を聞くことが出来た。『CHEKCCORI』は4年前、2015年7月7日にオープン。韓国文学が好きで、約10年前から邦訳出版を続けている出版社「クオン」の社長さんが「好きなものを多くの人に伝えたい」という思いから始まったらしい。文学ブームの影響は感じるそうで若い人が増えたようだ。驚いたのは中学生の女の子がお母さんと一緒に来たり、恋人のデートスポットにもなったりしているということ。また時には韓国人のお客さんの姿も見えるらしい。自国の本を隣国日本で見られて感動しているという。実を言うと筆者も韓国人の友人からこのお店を紹介してもらった。
ここまで書いてきて思うかもしれない。「K-文学が流行っていることは分かったけれど、何から手に取ればよいのか」。ご心配なく。店員さんに初心者向けのオススメを聞いてきた。まず韓国語のまま読むなら以下の3冊。左から詩集、エッセイ、漫画である。どの本も1ページに数行しかないため読み進めるのが簡単だ。
左から시 읽는 밤/너에게 하고 싶은 말/못 잡아먹어 안달。8月31日、筆者撮影。
次に邦訳本。こちらは「第11回K-文学レビューコンテスト」に絡めてお伝えしたい。これは課題図書6冊のうちいずれかを選択して800字から1000字のレビューを書くコンクールである。店員さんからは、中学生・高校生なら「1945,鉄原」。若い女性には「ショウコの微笑」を奨められた。締め切りは今月10日。筆者もすでに一冊購入しており、応募しようと考えている。これを機に皆さんも手にとってみてはいかがだろうか。
また『CHEKCCORI』ではブックカフェということで、韓国の伝統茶やお餅を食べられる。筆者もお茶を試してみたが、爽やかでとても美味しかった。さらに大学生(25歳以下)なら、買うときに割引もきく。いいこと尽くしの場所であった。
皆さんも一度、訪れてみては。筆者も次の来店までに恋人を作りたい。
参考記事:
9月5日朝日新聞朝刊国際面「(特派員メモ ソウル)詩に込められた思い」
4月16日朝日新聞「女性の困難描く、韓国の小説ヒット」
8月10日日本経済新聞「外は夏 キム・エラン著」
2018年1月25日日本経済新聞「韓流ブーム、次は『K-文学』」
参考資料: