「エロ本」が教えてくれたもの

朝刊を読んでいると雑誌や本の広告をよく見かける。新聞によって掲載されているものは異なる。日本経済新聞は金融や株に関する書籍が多い。読売新聞では保守系の論壇誌をよく見かける。地方紙を読めば郷土史の広告も見かける。それらを読み比べるのが楽しい。出版不況と叫ばれるが、本好きの筆者にとっては新聞広告から買いたい本のヒントをもらうことも多い。しかし、新聞広告で目にすることのない出版物がある。いわゆる「エロ本」である。

成人雑誌はコンビニに行けば必ず目にしてきた。「一体誰が買うのだろう」と筆者は今も素朴な疑問を抱いているが、そうした雑誌類が並んでいないコンビニも、それはそれでコンビニらしさを感じない。海外から日本に来た友人たちは「日本のおかしなところはコンビニにあんな雑誌を置いているところだ!」と口を揃えて言うので、筆者の感覚の方が国際基準から逸脱しているのだろう。確かに留学した韓国や旅行したアメリカではポルノ系の書籍を一切見かけなかった(ただし、芸術ジャンルでの男女のヌードはあったけれども)。

セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンのコンビニ大手3社は、今月から成人雑誌の取り扱いを原則として打ち切る。先月28日付の日本経済新聞によると、セブンの100店舗、ファミマの約20店舗以外は販売を止めるという。ローソンでは全店舗で取り扱いを止める。

都内のコンビニの雑誌コーナーから成人雑誌の姿が消えていた。2日、東京都新宿区で筆者撮影。

2020年の東京五輪を控え、訪日する外国人のイメージ低下を防ぐ目的があるらしい。子どもや女性が訪れやすい環境づくりにも貢献することだろう。しかし筆者は知っている。成田空港や中部空港の書店に成人雑が販売されていることを。街場のコンビニから失くすのも大切だが、まずは日本の玄関口に置いている方を撤去する方が先決事項ではないだろうか。コンビニには無いけれども空港にはあるという状況では「やっぱりジャパニーズはエロ本が好きなのか」となりかねない気がするが。

1日の朝日新聞には7月に刊行された「日本エロ本全史」の著者でアダルトメディア研究家である安田理央さんのインタビューが掲載されていた。それによると、コンビニで成年雑誌が売られるようになったのは80年代以降とのこと。販売部数が一気に跳ね上がり、10万部以上のものも珍しくなかったという。

安田さんにとってエロ本とは「色んなフェチがいることを教えてくれた」もの。学校では教わらない価値観の多様性を学んだという。筆者もあくまで「個人的な性的嗜好」として抱く分にはSMが好きだろうが熟女が好きだろうがBLが好きだろうが、何でも構わないと思う。安田さんが言うように、エロ本は様々な価値観を教えてくれる媒体だったのかもしれない。

とはいえ、誰しも「用量、用法」を守るとは限らない。一つ間違えれば歪んだ性を刷り込む負の媒体になる場合もある。適切な性教育を施す人材や媒体がなくては意味がない。

などと考えていると、海外の友人からメッセージが届いた。「日本人はアブノーマルなプレイに興奮を覚えるって聞いたけど、本当なの?」。筆者は開いた口が塞がらない。海外への誤解はどう解けば良いのだろう。エロ本に答えが載っているはずもないし…。

参考記事:
2日付朝日新聞朝刊(東京14版)紙面広告
同日付読売新聞朝刊(東京14版) 紙面広告
同日付日本経済新聞朝刊(東京14版)紙面広告
1日付朝日新聞デジタル「『エロ本』が死んでいく サブカルのゆりかごだった時代」
8月28日付日本経済新聞電子版「コンビニ3社、成人向け雑誌販売店 全体0.2%に」