著作権のあり方を問う

現在、日本の著作権の保護期間は原則として著作者の死後50年となっています。しかし、アメリカやオーストラリアでは70年であるなど、各国によって保護期間が異なっているため、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉における問題の一つとなっています。

この著作権の保護期間に関する問題の根は深いと感じています。そもそもの目的は、書き手や創り手に自らの作品の利用について独占する権利を与えることで、創作意欲を高め社会の発展を促すことです。私自身も著作物の不当な利用を防ぎ、創作という功績に対し報酬を与えるためにも、やはり著作者に対し特別な権利が与えられるべきだと思います。

しかし、ここで問題になるのが過剰な独占です。過去の作品を参考にすることは新たな創作活動においては重要なことです。著作権の保護があまりに長いと、そうした挑戦の芽が摘まれ、社会の発展を阻むとも考えられます。これでは著作権が掲げる「社会の発展」の目的と明らかに矛盾してしまいます。自由な表現が抑えられたり、過去の作品が忘れ去られたりすることが危惧されます。

あちらを立てれば、こちらが立たず。なかなか難しい問題です。今後の著作権のあり方は、作者の権利を認めながらも、その成果を広く利用できるようにして、後に続く創作活動を促すという二つの面から考えた上で、より社会の発展に寄与するものにしなければなりません。例えば、作者の希望する作品利用の制限範囲によって保護期間を変えるのはどうでしょうか。これからも 皆さんの意見を参考に、この難問に取り組んでいきたいと思います。

 

参考記事:4月3日付朝日新聞朝刊(東京14版)9面(経済面)「TPP月末に首席会合 著作権保護期間を協議」より