広がるセルフレジ  無人の日常に慣れるな

祖母の家の近くには昔ながらの市場があります。
「この財布、お気に入りなの!」「今日、暑いからアイス買っていこうかな!」
祖母はいつも、ひと言、ふた言でもレジの人との会話を楽しんでいます。

先日見たドラマでは、次のような一コマがありました。
空気ばかり読んできた主人公。今までは、混んでいるレジを見て諦めていましたが、自分を変えるためにも勇気を出して会計の間違いを指摘。すると、レジの人からは深く謝られ、常連らしい見ず知らずの女性客には「エノキあげるから許してあげてー!」と言われます。有人レジに付きものの打ち間違いからの一コマ。なんだかほっこりするシーンでした。

ですが、このような光景、見られなくなる日が来るかもしれません。

少子高齢化が進む今、人手不足が深刻です。本日の日経新聞に、セブンイレブンの省人化への取り組みが取り上げられていました。店員の業務時間のうち、レジと倉庫スペースへの移動に割く時間が多いことから、レジカウンター内側に多くの在庫を収納できるようにするほか、セルフレジも本格運用に踏み切るといいます。

最近スーパーやコンビニで見掛けることが増えたこのセルフレジ。正確なうえ会計の待ち時間も減ったことから、多くの人にその「便利さ」が買われています。一方で断固として使わない人もいます。私の祖母もその一人です。

「機械の使い方が分からない」「一回聞いてもすぐには使いこなせない」「だったら今まで通り有人レジの方が良い」

若者たちは便利さを買っていますが、高齢者では不便さを感じる人がいるのも事実です。セルフレジ導入の動きが加速して、使いこなせない利用者が置いてきぼりになる事態は防ぐべきです。地元のスーパーでは、2つが有人レジ、4つがセルフレジとなっています。選択の余地は残してほしいものです。

一方で、セルフレジを「便利」としながらも、「やることが減ったわけではない」と冷静に分析する人もいます。本日の朝日新聞に掲載された益田ミリさんの記事には、はっとさせられました。

洋服が入ったカゴをのせ、画面を操作する。お金を機械に投入する。ハンガーから服を外す。袋のサイズを選んで服を入れ、カゴを片付ける。いつもよりもやることは増えていた

店からすれば、買い物客が自分で会計してくれている間、別の仕事がこなせるので、たしかに「便利」でしょう。不思議なのはやることが増えた利用者の多くも、セルフレジを「便利」だと言うことです。

「便利」って一体何なのでしょうね。自動で計算してくれることでしょうか。待つ時間が減ることでしょうか。それなら分かりますが、人と関わらなくても済むことであったならば寂しい世の中になったなと残念に思われてなりません。

「便利」が加速し、無人化が進んでも、人と関わることを煩わしいと思う世の中にはなってほしくはありません。もし、すべてがセルフレジの世の中になったとしても、あくまで人と人の関わりのなかで社会は成り立っていることを心に留めて生活したいですね。

参考記事
26日付 日本経済新聞(12版) 13面 「セブン、省人化へ実験店」
同日付  朝日新聞(14版)   27面 「オトナになった女子たちへ 益田ミリ 店員さんがいないレジ」