歳費カット パフォーマンスは不要

この通常国会で改正歳費法が成立しました。普段聞くことのない歳費法という法律。この改正には、議員の歳費自主返納を可能にするという目的があります。

近年、国会議員は「高給取り」として批判され続けてきました。国会議員は国会法の規定により、国家公務員の最高給与額より少なくない額を受け取ることとされるほか、歳費以外にも文書通信交通滞在費や期末手当など様々な名目でお金を受け取っています。もちろん各議員が実際にいくら受け取っているのかという問題以前に、「国会議員といえば高い給料を受け取ってそう」というイメージだけが先行している部分や、その高額な給料に見合う仕事をしているのかという疑問の方が大きいことは否めませんが。

みなさんの中には「給料を一部国に返納する議員はいないのか」と思う人もいるかもしれません。現実に、こうした批判や国の慢性的な財政赤字を鑑み自主的に歳費を返納しようと考えた議員も少なくありません。

しかし、公職選挙法が立ちはだかるのです。同法の規定上、受け取る歳費をそのまま国庫に返納してしまうと、禁止されている「寄付」行為に該当する可能性が高いのです。そのため、歳費2割カットを訴える日本維新の会は所属議員が毎月18万円を被災地に寄付することで「身を切る改革」を訴えています。

こうした中、参議院の定数を6議席増やす改正公職選挙法が成立しました。議員の数を増やすことへの批判を意識してか、この夏の参院選で増える3人の3年間分の歳費6億7000万円分に相当する月7万7000円を自主返納することになりました。

しかし、実際に自主返納する見通しなのは自民党と公明党に限られる見通しです。最大野党の立憲民主党は対応が決まっておらず、維新や共産は返納に応じないことを決めています。

国の財政赤字がクローズアップされる度に、国会議員の歳費をカットする、いわば感情論が噴出してきました。しかし、各議員の歳費をある程度削減したところで数百人いる議員全員を足しても効果は限定的でしょう。また、先に紹介した通り、立法府に属する国会議員は、行政府に所属する国家公務員の給料の最高額に劣らない額を受け取る必要があります。あまりにも国会議員の歳費をカットすることに注力すると、立法府の権威に傷がつきかねません。

国会議員への批判として「庶民感覚が~」というのが定番になっています。しかし、仮に歳費を民間の平均給与並みに削減したら、どれだけの人が国会議員を目指そうとするでしょうか。選挙のたびに雇用が脅かされ、平日は国会、週末は地元の有権者と交流する。どれだけ批判されようが、日程的に多忙であることに違いありません。

国会議員の歳費をちょっとカットするという「パフォーマンス」は必要ありません。税金から給与を受け取る以上、それに見合う仕事が求められています。

参考記事:

24日付 読売新聞朝刊(14版) 4面(政治・経済)「歳費返納 対応割れる」