AI社会を生き抜くために  国語力を見直そう!

AI。この文字を新聞で見ない日はないと言っても過言ではありません。AI社会を生き抜くために、大学・企業は人材の育成に力を入れています。その波が中学や高校にも届き、理系に特化したコースを置く私立中高が増えているようです。しかし、近年の教育の現場は、偏りすぎてはいないでしょうか。

もちろん理系の学びで培われる論理的・批判的な思考力も、これからのAI社会を生き抜く上で必要になっていくでしょう。今朝の朝日新聞の記事で都立小石川中等教育学校の梅原章司校長の言葉が取り上げられていました。

様々な科学技術が身近になった今、文系理系と分けている時代ではない。誰もが理数的な知識や論理的思考力を養う必要性がある

文系だから、理系のことを分からなくてよい、AIのことなど理系に任せておけばよい。そんな考えは時代遅れなのかもしれません。常に変わりゆく世の中を生き抜くために、学問の垣根を越えて、あらゆる知識・思考力が必要になっていくことでしょう。

ですが、文系に関することはどうでしょうか。「本を読むひとが減った」「最近の若者はきちんとした言葉を話せない」「文脈を読み取ることができない」・・・。このような発言を、皆さん一回は耳にしたことがあると思います。しかし、読解力を向上させよう、文系科目に力を入れようといった声を聞く機会はあまりにも少ないように感じます。

国語力の低下の原因は、本を読む機会が減ったことがすべてではありません。核家族化など家族の在り方の変容によって起こった家族から子供への言語教育力の低下。近年のLINEをはじめとするSNSの普及。これらも原因のようです。

最近では、LINEに送信取消機能ができました。今まで以上に文章を考えず、そして読み返しもせず送ってしまうことが増えたという人も少なくないでしょう。まるで会って話しているかのようにやり取りが出来るSNS。便利ではありますが、メールや手紙に比べると文章を組み立てず、読み返すことなく安易に送ってしまいがちです。

そのような世の中であるからこそ、教育の場、特に小学校から高校において文系科目は重要ではないでしょうか。筆者自身が文系なので肩を持ってしまいますが、やはりすべてにおいて読解力をはじめとした国語力が根幹にあるように感じています。文章を構成する。文脈を読み取る。この能力があって初めて、論理的思考力の養成ができると思います。

5月10日の日経電子版では、「AIに勝る読解力を身につけよう」という見出しで新井紀子さんが語っていました。

読解力は生産性に直結する。文書やメールを読んできちんと実行できないメンバーが組織の中に数人いるだけで、ビジネスやプロジェクトは滞り、生産性は下がる。AIと差別化できる力は『創造力』だとする論もあるが、論理性や構成力のない思いつきはアイデア倒れになりやすい。型破りは基本の型が身についたうえで破壊するから型破り。まず母語である日本語やAIの基礎となる数学をしっかり身につけてほしい

これからの時代、AIはどんどん身近なものになっていくでしょう。ですが社会の全てを飲み込むわけではないはずです。「AIに仕事が奪われる」と怯えるのではなく、人間だからこそ備わっている国語力の向上に努める。できることは、理系の能力を養うことだけではないと思います。何事も偏ってしまうのはよくありません。国語力の向上にもう少し、目を向けていきたいものです。

参考記事
15日付 朝日新聞(東京13版)28面「AIに対応できる人材育成」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44544010Y9A500C1SHA000/日本経済新聞電子版「AIに勝る読解力養おう 新井紀子さん」

参考文献
www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/04020301/003.htm 文部科学省「第2これからの時代に求められる国語力」