将棋界 プロ棋士活躍の裏側で

近年、将棋界が熱く盛り上がっています。2年前には藤井聡太棋士の連勝記録が話題になり、社会的なブームが巻き起こりました。しかし、ニュースはそれだけで終わりではなく、昨年には8大タイトル、すなわち竜王、名人、王位、王座、王将、棋王、棋聖、叡王を8人が分け合う状況になりました。複数タイトル所持者がいない混戦状態は、1987年以来31年ぶりの珍事でした。

先日は羽生善治九段が勝ち星歴代単独1位となる1434勝をあげ、こちらも大きく報じられました。天才ばかりが集まるプロの世界において、通算勝率7割超、年間平均勝利数40勝を記録しているのは、凄まじいの一言に尽きます。

しかし、プロ棋士の華々しい活躍の裏側で、プロになるための過酷な競争に身を置いている若者たちも数多くいます。今日の朝日新聞朝刊には、奨励会に通う少年、青年の特集が載っていました。「奨励会」とは将棋のプロ棋士養成・選抜機関です。全国トップクラスの小、中学生が入会試験を受け、毎年30人程度が合格して入会を許されます。一方、プロすなわち四段になれるのは年間わずか4、5人程度です。入会することすら非常に狭き門であるにも関わらず、その中で熾烈な闘いを勝ち抜き、プロになることは至難の業と言えます。

年齢制限もあります。満21歳までに初段にならなければ、さらに満26歳までに四段(プロ棋士)に昇段できなければ強制的に退会させられる、という掟があるのです。

プロ棋士の野月浩貴八段も、

対局前に、将棋盤がぐらんぐらん揺れて見えるんです。自分がまっすぐ座れてないんじゃないかって。だから両手を畳について身体を支えるんだけど、それでも盤が揺れて見えるんです。こんなことは、プロになってから一度もないです。

奨励会は首にロープを掛けられた状態で将棋を指す。まともな将棋なんて指せるわけがない。

とコメントしている程です。プロになれる保証がない世界において、プレッシャーと日々戦い続けなければならない奨励会員の実態を考えると、この表現もあながち間違っていないかもしれません。しかし、それでもプロ棋士への道を求めて、必死に研究と実戦に打ち込む奨励会員の姿には、同世代の者として尊敬の念を抱きます。目標のために必死に努力する彼らの姿を見習いたいと思います。

 

参考記事:

16日付 朝日新聞朝刊(大阪13版)19面「将棋 天才たちの青春」