中学校に入りたいなら覚えるより考えて 

昨日、久しぶりに母校の公立中高一貫校を訪れました。中学3年生を対象とした進路学習の授業で、自身の大学進学時にどのような選択や準備をしたのかを話すためです。高校受験を経験しない生徒たちは、早くから大学受験に対する意識を高め、卒業後の進路に向き合う必要があります。後輩たちに役立ててもらおうと、同窓生12人が進学先の決め手や大学生活について講義しました。

「センター試験」という言葉を耳にしながら、「この子たちが3年後に臨むのは、センター試験ではなく大学入学共通テストなのか」と考えを巡らせていました。思考力や判断力、表現力を問う試験に移行しつつあります。AO・推薦入試などの入試形態も増え、選択肢が広がり、生徒たちに求められる能力も変化しています。

大学入試改革の影響により、中学入試の形態も以前とは異なっているようです。暗記した知識を問う従来型の試験から、思考力を重視した「適性検査型」を実施する私立中が増えています。都内のある女子校では、「大学入試改革で、教科の枠を超えた問題が増える中、中学入試の形も変えよう」と話し合い、適性検査型に似た科目を4年前に導入しました。

これまで、適性検査型の入試は公立中高一貫校の入学者選抜で用いられてきました。公立中は、倍率が6〜8倍を超えることも多く、試験のチャンスは1度きりしかありません。適性検査型を導入することで、併願先として受験してもらい、公立校が不合格だった受験生の受け皿になることを狙った私立中も多いようです。

「適性検査型で入学した生徒が授業で活躍している」という声や、「塾での勉強疲れがなくのびのびとした子が多い。入学者の雰囲気が明るくなっている」という評判もあるようです。

私は、9年前に母校の適性検査を受けました。日本語の聞き取りテストや作文、絵を読み取る問題など、ユニークな設問を楽しみながら解いたのを覚えています。どの問題も答えが明確でないため合否を推測しにくく、合格発表までは生きた心地がしませんでしたが。

大学入試改革を発端として、前段階の入学試験や学校教育が見直されるのはとても良い傾向にあると言えます。めまぐるしく変化する時代に活躍する子供たちを育てる制度を今後も期待したいものです。

 

16日付 朝日新聞朝刊(東京14版)32面(東京)「適性検査型入試 私立中で増加」