毎日5時間残業、あなたならできます?

昨今話題の働き方改革。その指針を定めた働き方改革関連法による残業時間の罰則付き上限規制が今年4月から始まります。ただし、医師は業務の特殊性から5年間の猶予が認められ、適用は2024年度からとなっています。

医師や看護師の労働環境が過酷であることが一般的に言われています。筆者も昨年春に喉の病気で3週間ほど大病院に入院しました。その際、主治医として親身になって治療してくださった医師やそれを支える大勢の看護師のお世話になりました。

夜中に高熱が出ても、ナースコールを押せば何時だろうが駆け付けて解熱剤を点滴してくれ、喉の強烈な痛さで寝付けなければ睡眠導入剤を処方してくれ、親が病状を聞きたいと言えば時間を割いて親切に説明してくださいました。その合間にも入院患者のみならず外来患者の診察や手術に時間が割かれるなど、素直に「大変な仕事だな」と感謝していました。

その医者の残業時間は、例えば通常の医療機関の勤務医は一般労働者と同じく年間960時間とする一方、救急などを担う勤務医についてはその2倍にあたる1900~2000時間という暫定的な基準が厚生労働省から示されています。これは勤務時間全体ではなくあくまでも残業時間です。365日毎日残業したとしても、1日に平均5時間以上という想像するだけでも過酷な状況に設定されています。

また、残業時間の制限と合わせて連続勤務時間を28時間とする案も提示されています。なぜ医師はこうした過酷な労働環境に置かれてしまうのか。全国自治体病院協議会の小熊豊会長は、医師が都市部に集中して地方に少ない現状を指摘しています。国は2035年度には全国の医師不足が解消するとしていますが、では残り16年間も今のような過酷な労働は続いてしまうのでしょうか。小熊氏は、地域勤務の経験がない医師には開業を認めないというくらい思い切った対策が必要だと主張します。

また、医師の働き方改革には市民の医療へのかかり方も重要だとしています。重症でもないのに地域の診療所ではなく、いきなり大病院へ行くことのないようにするなど、患者自身もできることを積み重ねていけば、周りめぐって患者の利益につながってくるのです。

重い病気や事故は、お正月だろうが、夜中だろうが、お盆だろうが起こり、時を選びません。そうした患者が真に必要なケアを受けられるよう、医師制度を支える国と病院、そしてユーザーである患者の双方が知恵を絞る必要があります。

参考記事:

1日付 読売新聞朝刊(14版) 13面(解説)「論点スペシャル 医師の長時間労働改めるには」