政府の統計への信頼が揺らいでいます。厚生労働省がまとめている毎月勤労統計で不適切な処理が行われていた問題が尾を引いており、政府は18日、雇用保険の給付が足りなかった分を盛り込んだ来年度予算案を閣議決定し直しました。閣議決定のやり直しは9年ぶりのことです。
ことの発端は毎月勤労統計の調査対象のうち、東京都の調査分だけ全数調査が必須にもかかわらず一部の事業所を抜き出してまとめる抽出調査に切り替わっていたことにあります。抽出調査は2004年から続いており、その前年には抽出調査を容認したとも読み取れる作業要領が存在していました。これにより、追加給付の対象は延べ2015万人、564億円に上ります。
もちろん、雇用保険などを少なく受け取っていた被保険者は怒り心頭ですし、ネット上でも長年にわたる厚労省の不適切な振る舞いに批判の声が殺到しています。一方で、「それって批判と言えるのか?」と思うようなコメントも多数見受けられます。
―「補填は厚労省の過去の幹部・職員も含め資産差し押さえても厚労省内で補充するべきと思う」
―「厚労省幹部への給与支払いを中断せよ」
まあ、気持ちは分かります。たとえ足りない支給額が数千円の決して大きくない金額でも、失職中の方から見れば喉から手が出るほど手に入れたいお金でしょうし、暮らしの不安を少しでも和らげるものとなるでしょう。しかし、そんな無責任なことばかり言ってると、今回の件に関する政府批判そのものが感情的なものに過ぎないと受けとめられてしまいます。
厚労省の職員も大多数の人は正義感が強いでしょうし、彼らにも養うべき家族がいるはずです。公務員だからと言ってボランティアのように働くよう主張するのは意味が分かりません。
同時に、毎月勤労統計の誤りが原因で地方公務員の育児休業手当なども過小に支給されていたことが判明していますが、そちらの問題には全く光が当たっていません。被害者が公務員なら同じ過小給付であってもどうでもいいのでしょうか。
政府が何か不始末を起こしたからといって、それに対して何を言ってもいいわけではありません。もちろん、ネット上の声だからそれを真に受ける必要はないかもしれませんが。しかし、将来公務員を志望する筆者は今回の不祥事に加えて、それに対する批判にも少し悲しくなってしまいました。批判するならロジカルに、かつ批判を受けてしかるべき対象に対して行うべきです。
参考記事:
19日付読売新聞朝刊14版 3面(総合)「厚労省「隠蔽」拭えず」