ふつうに食べたい。心から願った2年間

自分は摂食障害だったのかもしれない。大学3年生の頃から、食べることへの不安を抱き続けてきた。

きっかけは、当時入っていた大学新聞部での日々。人手が足りないなか、締切時間に追われたことだった。いらつき、やけ食いした。その時から、ストレスがたまると食べる、というパターンができてしまう。大学に入学してから6キロ減ったはずの体重はみるみる元に戻り、1年で体重は15キロ増えた。

顔は丸くなるし、身体のラインもどんどん変わる。ひと頃は、真夏の暑いさなかにもマスクを着け、長袖を着ていた。ひたすらに自分を隠したかったのだ。就活では髪をまとめて顔がよく見えるようにしなければならなかったので、苦痛だった。外では人目が気になって小食だったので、おかしいなと思われていたかもしれない。

本当に不思議なのだが、一度スイッチが入ると、お腹はいっぱいではちきれそうなのに食べ物を詰め込んでしまう。そして食後に強い後悔が襲ってくる。どうして痩せたいのに真逆の行動をしてしまうのか。最初は下剤を使っていたが、腹痛はつらく、吐くのも嫌で途中でやめてしまった。

ある日、摂食障害を経験した女性の記事を読んでいると、こんな言葉があった。

ふつうに食べることがこんなに難しいなんて、思ってなかった。

自分も同じ気持ちだった。一時的に食欲がなかったり、やけ食いをしてしまったりするのとは違う。「食べることが普通にできない」状態が長く続き、体型や体重に対する強いこだわりがあるのが摂食障害の特徴だという。私は医師の診察は受けていないので、断言はできない。これはただのやけ食いで、自分でなんとかできるかもしれないと、受診の決心がつかなかったのだ。しかし、あてはまることが多かった。

実家や祖父母の家にいったときは、「これなら太らないよ」と野菜中心の料理をたくさん作ってくれた。ありがたく思う一方で、気を遣わせていることは惨めでもあった。

理想の自分とかけ離れていること。過食をやめたいという強い気持ちがあるのにそれに反する行動をしてしまうこと。そのせいでストレスがたまり、また食べ、悪循環に陥っていく。がりがりに痩せたいわけではないが、とにかく2年生の頃に戻りたい、と常に思っていた。

就活が終わって大きな不安が去り、過食衝動は落ち着いた。今では体重も半分以上は元に戻っている。痩せたい自分はまだいるし、ときどき食べすぎる。人前での食事は緊張する。それでも豆腐やヨーグルト、玄米など、太りにくい食材を買ったりよく歩いたりするようにしている。

過食や拒食において一番つらいのは、「今の自分」を認められないことだと思う。だから人に「大丈夫だよ」と言ってほしいけれど、打ち明けるのが怖い。「プラスサイズでもいいじゃん」、「ありのままのあなたでいい」。愛のあるポジティブな言葉だが、苦しみの最中にある人にはなかなか受け入れられないのではないか。
理想は高くてもいい。でも、「今のわたし」を嫌わないように心がけることでだいぶ楽になる。

春から社会人になる。新生活にストレスはつきものだろう。うまくかわせるようになりたい。

参考記事:18日付 朝日新聞朝刊(東京13版)29面(生活)「(患者を生きる:3717)食べる 塩とたんぱく質制限⑤情報編」
2018年4月13日 朝日新聞デジタル「『ふつうに食べられない』拒食・過食、ささいな一言で」