ブランド牛、旬のフルーツ、新米…。ふるさと納税といえば、豪華な返礼品で寄付を募る自治体が続出し、規制を強化する流れが進んでいます。しかし今、返礼品目当てではない、新しい支援方法も注目を浴びつつあります。
ふるさと納税の制度と「誰かの役に立ちたい」という思いを繋ぐのが、大手サイト「ふるさとチョイス」が始めたGCF(ガバメントクラウドファインディング」です。地域の課題を解決するために、具体的な使い道を掲げて自治体が寄付を募ることが、大きな特徴です。インターネットを通じて小口資金を集める「クラウドファンディング」とは異なり、基本的には目標金額に達しなくても、期間を延長したり規模を縮小したりしながらプロジェクトを継続させます。
記事には、東京都文京区の「こども宅食」の取り組みが紹介されています。ひとり親など生活が苦しい家庭に二ヶ月に一度、お米やレトルト食品などの食料品を宅配する仕組みです。8ヶ月あまりで目標額の4倍を超す、8千万円が集まりました。発案した、NPO法人「フローレンス」の駒崎弘樹代表理事は、「行政が民間と手を組んで社会課題を解決する。ふるさと納税の新しい形を示したい」と話します。
このほかにも、地域のお祭りの踊り子衣装を新調し郷土芸能を守る(岩手県遠野市)、町民が演じる震災直後の街を舞台としたミュージカルの鎌倉公演(宮城県七ケ浜町)、公立小中の教室へのエアコン設置(奈良県桜井市)など、多岐にわたる事例があります。コンゴ民主共和国で性暴力にあった女性たちを支援するという、海を越えたふるさと納税もあるそうです。
実際にホームページ(https://www.furusato-tax.jp/gcf/project)を見てみると、現状や地域の人々の声、事業に携わる方の熱い想いが詳しく説明されているのが印象的でした。お祭りやイベント式典への招待や子ども食堂の食事券贈呈を返礼とする事業もあり、新たな人と人の繋がりを生み出す点も素敵だなと思いました。複数自治体が連携して、地域課題にとどまらず日本が抱える大きな課題にも向かうことを狙いとした、広域連携GCFの取り組みも興味深いです。
共創することで発信力を高めたり、経験やノウハウを共有して効率を高めたりすることが期待できます。現在は、動物の殺処分を減らすプロジェクトや高校生が挑戦する事業を支援する取り組みがあります。
一方、留意すべきこともあるようです。GCFでは、返礼品よりもプロジェクトに対する「共感力」が、域外の資金提供者にとって重要となります。このため地域の課題優先度よりも、プロジェクトのユニークさや希少さを競ってしまう可能性があると、神戸大学大学院准教授の保田隆明氏は警鐘を鳴らします。自治体側も納税者も「地域の活力を引き出す」という本来の意義をしっかり理解することが重要になりそうですね。筆者も来春から社会人になります。目的や実現性を吟味して、この制度を利用したいです。
参考記事 18日付 朝日新聞 13版 24面(第二神奈川)「列島をあるく ふるさと納税10年「誰かの役に」新しい支援」
読売新聞オンライン 「ふるさと納税の進化形・GCFを知っていますか?」
(本文中の自治体名を一部修正しました)