【特集】東京五輪のレガシーは? ロンドン五輪跡地を訪れてみた!

開幕まであと2年を切った東京五輪とパラリンピック。今月、国がこれまでに大会の関連事業費として、8011億円を支出したと発表しました。それを受け、

日本経済新聞「五輪経費の透明化をめざせ」

読売新聞「東京五輪 経費を示して信頼を得よう」

朝日新聞「東京五輪経費 思惑先行、見えぬ実態」

という見出しで、各紙が社説を掲載していました。

当初予想していた国の負担費1500億円を大きく上回ると指摘したうえで、全体像が見えないことや成果の伴わない支出があったことへの憤りを報じています。

近年の五輪のうち、コンパクトな大会の成功例としてあげられるものに、ロンドン五輪があります。筆者は今月、語学勉強のため、ロンドンに滞在しました。その際に五輪・パラリンピックの跡地であり、現在は改装され一般市民に開放されているクイーン・エリザベス・オリンピック ・パークを訪れてみました。

公園の敷地は、とにかく膨大。まず、入り口を抜けると、水泳競技として使われたアクアティックセンターが目に入りました。五輪後は、市民が自由に利用できる場所として親しまれています。

奥に進むと、川や木々に囲まれた自然溢れる風景とともに、メインスタジアムが見えてきました。ラグビーワールドカップで使われたあと、現在はサッカープレミアリーグのウェストハムユナイテッドのホームグラウンドに生まれ変わりました。仮設施設を多く利用して五輪開催における費用は抑えつつも、跡地の利用はとても工夫されているなと感じました。

水泳種目が行われたアクアティックセンター

 

 

 

 

 

 

 

 

五輪・パラリンピックのメインスタジアム   隣の赤い建物は展望台とアトラクションとして改装された

 

 

 

 

 

 

 

 

レンタル自転車を漕いでさらに奥に進むと、選手村として使われた建物群イーストビレッジがありました。今は、市民が住むマンションになっており、低所得者向けの住宅もあります。周辺には、現在も工事中の建物がたくさん並んでおり、今後もさらに開発が進みそうです。他にも、メディアセンターとして使われた施設に大学やカフェなどが併設されたり、子供たちが遊ぶ遊具やアトラクションのスライダーがつくられたりしていました。訪れた際はホリデーの期間ということもあり、多くの家族連れで賑わっていました。かつて熱い戦いが繰り広げられた場所が、多くの市民に開かれていることは素敵だなと感じました。

企業や大学の研究所、カフェなどがつくられたヒアイースト

 

 

 

 

 

 

 

 

また、この公園があった場所はかつて、廃棄物置き場や工業用地として荒廃し、鉄道などのアクセスも悪かったことから、貧しい地域とされていました。そこでロンドン五輪を東部の開発と関連させ、開発を進めました。ストラトフォード駅を改修して交通環境を改善するとともに、商業施設も併設。数多くのファストファッション店やレストラン、複数の百貨店などが出店しており、大規模で華やかな雰囲気でした。

語学学校の若い女性の先生は、「イーストロンドンはかつて危険で近づいてはいけないと言われていたけれど、今は週末にショッピングを楽しむところになったわ」と五輪開発後の様子を語っていました。

もちろんより長期的な視点で見れば大成功したのかどうかはまだわかりませんし、真似をすればいいというわけではありません。それでも、どのように費用を利用するのか、また長いスパンで見てメリットがあるのか。議論が不可欠であり、私たちも慎重にチェックしていく必要がありそうです。

また、招致当初にかかげた復興五輪についても、被災地の住民を巻き込んだ具体的な取り組みが置き去りにされている印象をうけます。多くの国民にとって納得できる大会になるよう、どこに何のためにお金をかけるべきか、レガシーとして何を残すのか、注視していていきたいですね。

 

参考記事:日本経済新聞 21日 朝刊 「社説 五輪経費の透明化をめざせ」

読売新聞 15日 朝刊 「社説 東京五輪経費 を示して信頼を得よう」

朝日新聞 12日 朝刊 「社説 東京五輪経費 思惑先行、見えぬ実態」