鉄道会社の創意工夫

皆さんは京都鉄道博物館をご存知でしょうか。京都市下京区に2016年4月に開業したばかりの施設です。国内で初めて時速300キロ運転を実現した500系新幹線をはじめ、鉄道マニアにはたまらない有名な車両の展示やグッズの販売などを行い、開館した時点では、さいたま市の鉄道博物館(JR東日本)やリニア・鉄道館(JR東海)を上回る面積、展示車両を誇っていました。

この博物館の難点はアクセスです。一度訪れたことがありますが、京都駅から歩けないことはないものの、日陰のない道を20分近くもかかります。より手軽な市営バスは土日には家族連れで混雑します。そこで、JR西日本と京都市は最寄りの嵯峨野山陰線に新駅を設置することを決め、20日には駅名「梅小路京都西」を発表しました。これにより、足の便は大幅に改善する見込みです。

(日本経済新聞社より)

JR西日本は近年新駅の設置を精力的に進めています。これまでに神戸線さくら夙川駅(07年3月開業)や須磨海浜公園駅(08年3月開業)、京都線JR総持寺駅(18年3月開業)などの実績があり、今後もおおさか東線の延伸や大阪駅北のうめきた広場の新駅などJR西の攻勢は止まる気配を見せません。

確実に周辺地域ではその恩恵に浴しています。新駅開業で利便性が改善され、駅周辺への出店やマンション建設が相次いでいます。さらにJRと私鉄の競争が相当加熱している関西エリアならではの事情も。

例えば、さくら夙川駅の開業では、そこから徒歩10分程度にある夙川駅を持つ阪急が危機感を抱き、結果として特急を含む全列車を停車させる対抗策をとりました。京阪神エリアの鉄道ではライバル間の相乗効果がよく見られ、今後もこうした地域振興が望めそうです。

人口減少や少子高齢化が続く日本では、今まで通りの経営では企業はつぶれかねません。盤石と言われた鉄道会社ですら攻勢を強めているのですから、どの産業でも創意工夫が求められています。

参考記事:

21日付 読売新聞14版朝刊29面(社会)「新駅は「梅小路京都西駅」