カジノ法案 結論を急がないで

日本で長らく論議されてきたカジノ法案。深刻な弊害への警戒感も根強く、対象となる地域一帯をリゾートとして整備し、そのなかにカジノが含まれるといったソフトな法案に変えるなど、試行錯誤が続いてきました。

カジノを含む統合的リゾート(IR)実施法案は6日、参院本会議で審議入りし、本格的な議論が始まります。安倍晋三首相や石井啓一国土交通相が出席し、趣旨説明と質疑を実施する予定です。立憲民主党など野党は法案に反対しており、徹底抗戦する構えを見せています。

安倍首相は先月の衆院内閣委員会において、「日本全体の経済成長につながる」と、IRの実現に大きな期待感を示しました。特に強調したのは、「観光や地域振興、雇用創出」における効果です。

しかし、誘致に名乗りを上げた自治体をみると、一部地方を除いて、日本経済の中核都市とも言える大阪や名古屋などが並んでいます。加えて、横浜や東京までもが有力な候補地と考えられています。全国で設置が認められるのは三ヶ所。外国人観光客が増加し続けている今、IRの有用性はあるのでしょうか。

実現するのであれば、人口減少が進み疲弊する地方に置くことが適切ではないかと思います。私の地元、和歌山市も誘致に積極的な姿勢を見せており、約2万人の雇用を生み出すとの試算もあります。弊害はあるものの、地域おこしの切り札が乏しい中で大きな起爆剤になるのではないかとの期待があります。

だとしても、ギャンブル依存症対策など、厳しい規制が必要になるでしょう。現時点では、日本人客の入場料を1回6000円とし、上限を「週3回かつ月10回」と定めています。成功を収めているシンガポールと同様、本人や家族による出入り禁止措置や入場回数制限なども考えられていますが、本当に実効性があるのか。不安は拭えません。

副作用には、反社会的勢力の介在や治安の悪化なども考えられます。国会の審議にはからず、政令などで事後に定める内容が331項目に上ることも不安材料です。与党は今国会中での法案成立を目指していますが、多くの疑問や懸念に向き合い、慎重に議論を進めてほしいものです。

参考記事:6日付 朝日新聞 朝刊 13版 4面「カジノ法案、きょう審議入り 参院本会議、野党なお反対」     読売新聞 朝刊 13版 5面 「カジノ法案 きょう審議入り…参院 依存症対策法案 成立へ」