意識の欠如 被害招く 大阪北部地震

都市交通のマヒ、溢れる帰宅困難者、ブロック塀の倒壊、広がるデマ、物資の買い占め。
月曜日の朝に発生した大阪北部地震。今回の被害は、過去の災害の教訓を生かせなかった証拠でもあります。

被害を引き起こした原因が徐々に分かってきました。

「危険という認識はなかった」
高槻市立寿栄小学校の田中良美校長は、今回の地震で倒壊した同小のブロック塀に対する認識の甘さを明らかにしました。
建築基準法で定められていた補強がされていませんでした。その結果、震度6弱の揺れに耐えきれず、登校中の女子児童を巻き込んで倒壊してしまいました。

そもそも建築物の点検はしていたのでしょうか。高槻市教育委員会総務部に問い合わせました。
市の教育施設における建築物の点検の有無について尋ねると
「定期的な点検ではなく、学校からの報告や目視で危険が確認できた場合に点検を実施した」

とのことでした。

寿栄小学校の場合、2015年に開かれた防災研修の際、講師の防災アドバイザーがブロック塀の危険性について言及し、翌年2月に点検を実施したそうです。
市教委による点検ではひび割れや塀の浮き上がりが目視で確認されることはなく、ハンマーで叩くテストを踏まえ「安全性に問題はない」と判断。小学校側にも伝えていました。

(この時点検に当たったのは建築士の資格を持たない職員だったようです)

では、建築基準法に違反している認識はなかったのか。そう踏み込んで聞いてみると

「建築基準法に違反しているとまで頭が回らなかった」

建築基準法への認識が欠如していたことを明らかにしました。

高槻市の危機管理は十分だったのでしょうか。寿栄小学校のブロック塀倒壊で児童が亡くなったことについて、大阪府警は業務上過失致死の容疑で捜査をしています。

高槻市だけではありません。大阪市東淀川区でもブロック塀の倒壊で男性が亡くなりました。
地震発生時は通勤時間帯。多くの人が路上で危険にさらされていました

ブロック塀の危険性が浮き彫りになったのは今からちょうど40年前のこと。
1978年6月12日に起きた宮城県沖地震では死者28人のうち、6割以上の18人がブロック塀などの倒壊で亡くなっています。

その教訓を踏まえ、3年後の1981年に建築基準法施行令が改正されました。これによって高さ制限が厳格化され、鉄筋で補強したり、生け垣に置き換えたりする動きが多く見られました。
しかし、95年の兵庫県南部地震や2016年の熊本地震でもブロック塀の倒壊による死者が出ています。

過去の災害での痛ましい教訓が生かしきれず40年もの歳月が過ぎ去りました。

「想定外」の一言では済みません。
政府は月曜日の地震当日に全国の小中学校へ、国土交通省は昨日、全国の自治体へ、ブロック塀の安全点検を実施するよう要請しました。これから後、塀の倒壊による犠牲が無くなることを願います。

今回の大阪北部地震では他にも多岐に渡る課題が浮き彫りになりました。これらは対岸の火事ではありません。
そもそも日本に住んでいる以上、地震から逃れる術はほぼ皆無。
だからこそ災害について知る責任が私たち一人ひとりにあります。

一方で、災害発生から5日目にして地震の報道がめっきり減ったことに驚がくを超えて失望しました。
のど元過ぎれば熱さを忘れる。日本列島はW杯の熱をはらみ、月曜日の混乱が嘘のような週末を迎えようとしています。

これでいいのか、日本。

参考記事:
19日付河北新報朝刊(16版)総合面「通学路 身近な『凶器』」
同日付読売新聞朝刊(東京13版)1面「学校塀 全国点検へ」
22日付朝日新聞朝刊(東京13版)1面「『塀の危険 3年前伝えた』」
同日付日本経済新聞朝刊(東京13版)39面「ブロック塀の点検要請」

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