遺灰処理 1円落札の裏側

日本人の多くが死後に施される火葬。近親者の火葬後、喉など一部の骨などは収骨されますが、残りの「残骨灰」がどうなっているかご存知でしょうか。

その残骨灰の処理業者を決める自治体の入札で、参加した全社が1円で応札し、くじ引きで落札者を決めるケースが全国で相次いでいます。年間およそ2,000件の火葬がある兵庫県宝塚市では、2013年度以降、すべての業者が1円で応札。くじ引きで落札者が決まっており昨年度も約3トンの処理を1円で委託しました。

果たして1円で落札しても採算がとれるのでしょうか。実は残骨灰に含まれる貴金属を抽出し換金することで利益を得ているのです。西日本のある業者の社長は、ポロ袋いっぱいの貴金属を取材記者に見せ「これを売れば150万円ぐらいになる」と言います。専用の機器を使えば金属を抽出するのは簡単だそうで、多くは歯に詰められた金や銀、パラジウムですが、中には心臓のペースメーカーも含まれるようです。

2000年ごろにグラムあたり約1,000円だった金の価格は5,000円前後まで上昇し、これに目をつけて新規参入する業者が増えました。大阪府富田林市でも落札金額は09年以降毎回1円ですが、昨年は最多の17社が応札しました。東京や九州の業者も加わり、結局くじ引きで神戸市の業者に決まりました。「宝くじみたい」とある業者はぼやきますが、落とせたら利益が出るわけです。自治体側も、少しでも安く発注したいため、業者の採算性の確認などはしていないケースが多いそうです。

筆者もそうですが、こうした現状を知っている人は多くありません。法律上は残骨灰の扱いは自治体によって異なり、明確な解釈や指針がない以上、違法なものではありません。とはいえ倫理の上から議論が必要な問題ではないでしょうか。果たしてその行為自体が適切なものなのか。適切であるとしても近親者の遺体の一部が換金されているという現状を遺族にしっかり情報提供し、もし遺族が反対すれば遺族へ引き渡す制度を整備するなどの検討が必要ではないでしょうか。

参考記事:

5日付 読売新聞14版(大阪本社版)朝刊 1面/25面 「現場発 遺灰処理「1円落札」」