命救うSOSのジレンマ

いざという時、頼りになる119番通報。この救急出動が年々増加傾向にあることはご存知でしょうか。2016年の救急出動は10年前より97万件多い621万件。このような傾向に対し、総務省消防庁は救急現場で緊急性がないと判断された人を搬送しない際の隊員の対応マニュアルや教育体制の整備を来年度から進めます。なぜなら、出動数が多い都市部や1回の出動に時間がかかる過疎地などでは一刻を争う患者の搬送が遅れかねないという危機感があるからです。

今の救急搬送の現場には「重要度の高い患者を優先して運びたい」という考えと「緊急でないという判断に誤りがあるかもしれない」という考えのジレンマに陥っています。そしてマニュアルや教育体制の整備によってこうした問題が解決するようにも見えます。しかし、「搬送しないことを説明して納得してもらう方が時間がかかる」といった現場の声もあり、やはり一筋縄ではいかないようです。

今、地域によっては全ての救急車が出払ってしまうという事態も起きています。一方で、「救急であれば待ち時間なしで診察してもらえると考えたから」「病院までの交通手段として使おうと思ったから」など、明らかにマナー違反な使い方をする人がいることも事実です。

もちろん、トラブルを防ぐこうした取り組みも重要です。しかし、やはり一番重要なのは私たち一人ひとりがきちんとマナーを守って119番通報することではないでしょうか。

全ては1人でも多くの人の命が救われるために。

参考記事

6日付朝日新聞朝刊(京都14版)35面(社会)「救急搬送 しない判断」