大切な命を救うには

 高校生のころ、東京消防庁消防学校で救命措置の訓練を受ける機会がありました。人工呼吸や止血法、ロープ技能といった基礎的なものでしたが、実際やってみると難しいものでした。私は小学生の時にボーイスカウトに入っていたので、同じ訓練を受けていました。多少の自信はあったのですが、長い間やっていないと案外忘れていることは多いものです。

 実際の現場ではどうでしょうか。2011年、さいたま市に住む小学6年生の桐田明日香さんは、学校で行われた駅伝メンバー選考会の一万メートル走を走り切り、直後に倒れてしまいました。駆け寄った先生達は明日香さんの呼吸があると判断し、救命車が来るまでの11分間、胸骨圧迫やAED(自動体外式除細動器)の使用などを行わなかったようです。明日香さんは、病院に搬送された翌日に息を引き取ってしまいました。

 先生らは状態を誤認し、結果として大切な命が失われてしまいました。しかし、救命士のようなプロではないので、多少の知識があったとしても判断ミスは起きてします。また、突然の出来事に人はパニックを起こしてしまうので、普通ならできることも行動に移せないことがあります

そうしたことから明日香さんのお母さんである寿子さんは、彼女を思って再発防止に動きしました。市教育委員会や医師、有識者らと共に救急対応マニュアルづくりに乗り出し、完成したのが『ASUKAモデル』です。寿子さんは、全国各地で講演を重ね、マニュアルの普及に尽力しています。

『ASUKAモデル』を学んだ山口県の学生が駅伝大会中に倒れた高齢の男性の救命措置を手助けするなど、活動は実を結んでいるようです。

 消防学校で学んだ時に上級救命技能の資格を取りましたが、有効期限は3年間だったの既に失効しています。再講習を受ければ良いのですがなかなか行けていません。言い訳に聞こえますが、救命措置の技術を一般に普及するのは正直難しいと思います。自動的に処置を施してくれるAEDや救急時の対応の手順が明記されているマニュアルが普及することで、たとえ救命措置の技術や深い知識がなくても救われる人が増えることを期待したいです。

参考記事:
31日付 朝日新聞朝刊(14版) 35面(社会) 「救命 ASUKAモデル」