「手に取る」時代の到来

読者の皆さんに質問です。 21世紀において、最も偉大な発明は何だと思いますか。iPS細胞や青色発光ダイオード(LED)などノーベル賞を受賞したものを思い浮かべた方も多いかと思いますが、筆者は別のものを思い浮かべました。3連休の中日の今日は、世界のモノづくりを大きく変えるであろう3Dプリンターについてみなさんと考えたいと思います。

3Dのデータをもとに、熱した樹脂や金属などの粉末を吹き付けたり、何層にも分けて積み重ねることで立体を印刷することが出来ることを可能にした3Dプリンター、90年代以降、産業用で実用化されましたが、2009年に特許が切れ、価格は100万円から1億円と高額であったものが、5万円程度のものが登場するなど個人でも使えるようになる流れが出始めています。NASAの事業やドイツの航空機メーカーで素材の廃棄率を下げたり、スペアパーツを必要な時に必要な分だけ作り、在庫を減らす計画に活用されています。産業界での普及も然ることながら、アメリカや台湾では小学生の頃から3Dプリンターに触れさせ、技術を身に付けさせようという教育を普及させる流れが起きており、我々20代より若い世代では使えて当たり前という時代が来るのと考えられます。

これまで、新しい技術というと蒸気機関や鉄道、ダイナマイト、コンピューター、原子力など、国家的な産業や戦争のために開発、利用されてきた経緯を持つものが多い中、少しづつではありますが、この技術は個人への広がりを見せてきました。これまではアイデアがあっても、開発する術がない、資源がないという個人が圧倒的に多かった中で頭の中のイメージを具現化でき、本当の意味で「手に取るように」分かる時代、「一人一特許時代」が到来し、小学生の技術が世界を救うことも十分あり得るのではないでしょうか。

このように、良い面が想定できる以上、その逆の面も十分に想像できます。ダイナマイトが戦争に使われたことを機に、発明者ノーベルはノーベル賞を創設しました。原子力は原子爆弾に利用され、今も世界中に存在しています。このように技術には負の側面がある以上、個人に広まれば、危険なものが身近で開発されるリスクは大いに高まるのではないでしょうか。現に日本で3Dプリンターで銃を製造し、被告が一審で実刑判決を受けています。月並みな話ですが、技術というものは我々の暮らしを豊かにしてくれます。コンピューターが無ければ、私の投稿を皆さんに読んでもらうことは出来ません。しかし、時に痛ましい事態を引き起こし、人々を傷つける諸刃の剣です。また、STAP細胞の問題のように人や組織を大きく揺るがす問題にも発展し得ます。進歩のスピードは留まるところ知らない中、我々は新しい技術とどのように付き合っていく必要があるのでしょうか。皆さんのご意見お聞かせください。

参考記事:本日付朝日新聞グローブ 第146号 G-1~G-7