将来へのツケ払いを減らすために

政府は22日、2018年度予算案を閣議決定しました。一般会計の総額が過去最高の97兆7128億円に上る一方、税収は約59兆円と27年ぶりの水準に達する見通しです。

また、新規国債発行額も17年度より6000億円超減額するなど、好調な国内経済を背景に景気回復が財政再建を支える構図になっています。一方で、来年度予算案については専門家からは歳出改革に対して踏み込み不足との指摘が上がっています。

その代表例が、社会保障分野の改革の先送りです。高齢化による社会保障費の自然増を5,000億円程度に抑えるという目標こそ達成しました。しかし、児童手当の所得制限を超える人にも払う特例給付を廃止するよう財務省は提案しましたが、結論は先送りに。また、病院に行く際の「大病院志向」を改めるためにかかりつけ医以外を受診した際に定額負担を求める財務省案も来年度末まで引き続き検討することになりました。

18年度予算案の編成過程で、大病院志向だけでなく病院を渡り歩く患者が医療費を押し上げているとの懸念が示されました。大病院の処方箋を集中的に受け付ける「門前薬局」改革も中途半端に終わったとされ、専門家からは「メリハリに欠く」との指摘が上がっています。

そのほか、地方交付税を削減しようとしましたが総務省が反発し議論は継続に。農道整備や農地の大区画化を行う土地改良事業は民主党政権時より倍増されるなど、社会保障分野以外にも歳出が拡大した要因が多々あります。

どの改革も、国民に様々な形で「痛み」を求める共通点があります。政治家にとってはなかなか行いづらいでしょう。しかし、来年は大きな国政選挙がないため、ある程度痛みの伴う改革に踏み込む絶好のチャンスでもあるのではないでしょうか。

バブル期並みの税収見込みが、政府内の財政再建への危機感を薄めてしまい、政府与党からの歳出圧力が高まった印象は否めません。景気の腰を折らないように政府が支援し続けることももちろん重要ですが、将来世代にこれ以上の借金のツケ回しをしないよう、私たち一人一人も痛みをある程度覚悟する必要があります。

参考記事:

23日付 読売新聞朝刊(3面)「社会保障改革 先送り」