批判に終わらず、その先の改善へ

 日本の新幹線と言えば、世界の高速鉄道の中でもとりわけ安全で、正確な運行が特徴というのがこれまでの通説であり、当たり前のことでした。

そんな、日本の信頼を根本から揺るがしてしまう事故が起きてしまいました。東海道・山陽新幹線の最新車両「N700系」で走行中に台車に亀裂が見つかったのです。車両を保有するJR西日本が19日会見を開き、その亀裂が14センチに及び、あと3センチで破断するほどだったことを明らかにしました。同社は「破断すれば脱線の危険性すらあった」との認識を示しました。この問題で、国の運輸安全委員会は新幹線で初の「重大インシデント」に指定しています。

また、台車に亀裂が入るという問題にとどまらず、乗務員や乗客が異臭や異音に気付きながらも乗客約1,000人を乗せたまま3時間に渡り運行を続けていたことも批判を浴びています。その上、新大阪駅で乗務員が交代する際、それまで乗っていた乗務員が「問題なし」と伝えていたこと、また岡山駅で技術系社員が点検した際に運行を止めるよう進言していたにも関わらず指令員が運行を続けさせたなど、名古屋駅に着くまでに事故を防ぐための「チャンス」をいくつも無駄にしていました。

この事故は関西地方では特に大きく報道されています。12年前、兵庫県内で発生した福知山線脱線事故の教訓が活かされていなかったためです。脱線事故も今回の新幹線の車両を保有するのも同じJR西日本。夕方の各社の報道番組では「なぜ教訓が活かされなかったのか」「JR西は猛省を」などと厳しい意見が目立ちました。

幸いなことに、他の新幹線を運行するJR各社では問題が見つからなかったとのこと。今回の事故で名古屋駅の線路が一部使えなくなり、その影響で最大10分程度遅れがでました。たかが10分と思うかもしれませんが、東京と大阪の2大都市を結ぶ路線の10分の遅れは非常に大きな影響を及ぼしました。大惨事になりかねないこのような事故が起きてしまった以上、実態の解明を進めるとともに、二度とこのような事故が起きないために、安全点検や乗務員など徹底的に見直し、工夫してもらいたいものです。JR批判に終わることなく、その1歩先を行くべきです。

また、国を挙げて高速鉄道を輸出しようとしている関係者の努力を無駄にすることのないよう、安全への信頼性を早急に回復するべきです。大事なのは、これからです。

参考記事:

20日付け 読売新聞朝刊(1面)「のぞみ台車 破断寸前」